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2021年3月15日月曜日

変わる医療の常識。歯科レントゲンの防護エプロンが姿を消す?

ご存知でしょうか、いま一部の大学病院では、X線撮影時の防護エプロンを使用していないそうです。

X線が体の余計な部位に被爆しないよう防護する鉛エプロンですが、X線がぶつかると散乱線が生じます。このランダムな方向に発生する散乱線が、鉛エプロンで覆われない甲状腺などに影響を与える可能性があるとされています。

もともと鉛エプロンは子宮や睾丸といった臓器の防護を意識されていましたが、これは歯科X線撮影の照射部位から大きく離れているため、ほとんど影響がないといまでは考えられているようです。X線は距離が離れると著しく減衰するので、さもありなんと感じるところです。

これらを総合的に鑑みて、今まで常識的に使用されてきたX線防護用の鉛エプロンは、もしかしたら使わないほうが良いかもしれないというのが昨今の議題でした。


本件は既に歯科レントゲンに関する大手学会から視診がでています。


読みやすい資料なので気になる方はリンク先をご参照ください。内容としては下記のとおりでした。

1,防護エプロンの実効性はほとんどなく、患者の安心のために使われる 
2,使用を求めるわけでも、禁止するわけでもない 
3, 撮影に失敗して再撮影するより、鉛エプロンを使用しないほうがリスクは低い

以上から、私自身はやや迎合的ではありますが当分の間は「患者の安心のために」鉛エプロンの使用を継続します。

一方で例えば背中が曲がっている方や、肩の肉付きが良い方で、鉛エプロンを着用することで撮影が困難になる場合がこれまで多くありました。このとき鉛エプロンが撮影時に必須でないことを念頭に置き、非着用で確実に撮影したほうが良さそうです。

これはガイドラインにもありますが、防護エプロンをするよりも、撮影失敗からの再撮影による余分なX線被爆を避けたほうが良いという考え方に基づきます。


大学でエプロンを使用しないという教育がされている以上、次第に防護エプロンは姿を消していくかもしれません。

このように医療の常識が180度変わってしまうことは、珍しくありません。例えば昔は抜歯時に血液サラサラのお薬を中止していましたが、いまはいつも通り服用した状態で抜歯することが推奨されています。これは抜歯後の出血が止まらないリスクよりも、血栓による脳梗塞・心筋梗塞のリスクのほうが危険度が高いからです。

歯医者に行く際はこのようにこれまでとやり方が変わっている場合は多々ありますので、皆様のご理解を頂きたく思います。その際、疑問に感じたことは質問し、医院スタッフからしっかりとご説明があることは前提だと考えております。