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2021年3月14日日曜日

こどもの虫歯は親の責任?

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

先日ネットでちょっと話題になったのは、グランドジャンプで公表連載中の漫画「デンタルクエスト」に関してです。

このツイートに一部掲載された内容において、「子供の虫歯は親の責任なのか」という問題提起がされています。これに対し、歯医者から様々な意見がでてきました。それだけこのテーマは簡単なようで複雑なものだということかもしれません。

作者のツイートにもありますがこれは作品のごく一部なので、最新話全体を通じてどのような着地点を見出すのか、とても気になりますね!! 私も読むのが楽しみです!(まだ読んでいない)


さてこのテーマに関して私が以前から感じていることを以下にまとめます。

1,歯科実態調査を見ても分かるようにここ数十年で歯みがきは相当浸透してきており、今や歯を磨かない人はめずらしい。そういった世代が親になってきている中、子供の歯をしっかり磨いている親が大多数です。実際一部を除いて口腔衛生は良好である。ゆえに「歯をよく磨こう」という啓蒙は、やや時代に即していないと捉えています。


2,それでも歯みがきができない・やらない人たちがいる。この人たちはおそらく歯みがきが「できない・やらない」何らかの理由がある。それは子育てや介護などで日々の生活が忙しすぎるとか、部活で歯みがきする間もなく就寝するとか、歯肉が過敏で歯ブラシを辛く感じるとか、なんらかの障碍もしくは障碍グレーゾーンを抱えているか、等かもしれない。ここに「歯をよく磨こう」といっても上滑りするだけなので、「何らかの理由」に迫らなければ変わっていかない。


3,そうではなく一般的に歯みがきができているのに虫歯になっていくのは、2つの理由が考えられる。一つは生活習慣の間違い。例えば歯みがきしているけど夜間にスポーツドリンクやジュースを与えている等。夜間の水分補給は水が正しい。他には継続的にお菓子を食べていること。食後30分しないと歯の再石灰化は起こらないため、ダラダラ長時間食べるのは虫歯リスクが高い。これはジュースを30分ごとに飲むなどでも同じ。日中の水分補給も水や
麦茶といった無糖のものが望ましい。


4,それでも改善しないのは、子供自身の虫歯感受性によるものの可能性が高い。これは遺伝的な影響も強いため、両親が虫歯がちだとそうなる可能性が高くなる。この時は宿主因子の底上げとしてのフッ素による虫歯予防と、二次予防としての定期健診による早期発見が重要になってくるので、プロフェッショナルによる手厚い管理が必要かもしれない。


5,一方で虫歯予防としてのフロスなどはあまり有効性が示されておらず、歯と歯の間の虫歯になったからといってその原因を「子供の歯みがきにフロスをしていなかったから」という解釈をするのには強い違和感がある。


雑然と整理できていない所感ですが、今後まとめてどこかのウェブメディアでも論じたいと考えています。

とくに5について、私の原体験として強く印象に残っているのは、学生実習として大学病院の小児科のアシストについていた頃、非常に真面目そうな親が子供に虫歯ができたこととして、フロスの未使用を指摘されていた時の印象が強いです。

大人しく歯みがきさせてくれる子供は少ないです。そんななかでフロスの使用は親の負担が非常に大きくなります。

既に研究ベースでは隣接面齲蝕に対し、フロスでの予防効果はほとんどなく、フッ素を使用するとプラークをも貫通して統計的に有意な虫歯予防効果を発揮することが明らかになっています。

正しいフッ素の使い方を知れば、歯みがき後のうがいもしなくてよく、歯みがき粉をある程度飲み込んでも構わないことがわかります。つまり、親は労力を減らしつつ、予防効果の高い方法を取ることができます。


なんでも「やれ、やれ」という予防の時代は終わったと考えています。これからは「合理的に、楽に」やる予防というのが発展していく局面かもしれない。なんてかんがえています。


ところでデンタルクエストは、ところどころ意見の違うところはありますが、全体的にしっかり勉強して書かれた漫画です。ぜひ多くの皆様に読んで欲しいと思います!!


~追記~


歯医者さんも納得のオチになっているようです。

そういえばあくまで一般論の話として、ネタバレしたほうが内容が気になって購入率が上がるそうですね。