SNSボタン

FB連携SDK

2022年9月29日木曜日

「仕事中に歯が折れた」労災の歯科治療はどんなかんじ? 産業医学講習会に参加

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

親父が奨めるんで産業医学講習会にいってきました。労働衛生関連を学ぶのは発信などにも役に立つと思い、3日間朝10時から夜6時半までというハードスタイルの講習会を受けてきました。

自分から奨めといて「え!? 2日も休むの、なんで??」はないだろう親父よ。

形式としては座学なので、久しぶりの学生気分です。質問もしっかりしてきました。

私としては労働衛生コンサルタント(試験が必要な資格)をとるつもりはなかったので、もしかしたら場違いな講習会に参加してしまったかなと思いましたが、労災関係の実務を学べたり大変有意義でした。

今回は備忘録・情報共有として印象に残った部分を記録しておきたいとおもいます。


1,「仕事中に歯を折った」等の労災保険実務

労災外来受診で非常に多いケースですが、労災時の請求実務などは学校では習わないので私自身しばしば混乱することがありました。今回厚労省の実務担当の方からのお話を聞き、質疑もしてかなり整理されました。

まず労災時の治療は医療保険制度に基づく形で進むことになります。患者には治療という形の現物給付を行い、お金をいただくことはありません

医療機関側は通常1点=10円の診療報酬を、労災の場合は1点=12円で請求できるようです。労災は民間の保険会社が間に入っていることが多いですが、自信をもって通常治療するのと同様の診療報酬請求をしていけば良さそうです。

ただし診療報酬請求は治療期間が完全に終わってから数か月分まとめて行うことになるので、ここの事務フローをどうするかは工夫しなければならなそうです。電子カルテが対応してくれれば楽なのに


2,セラミック等の被せ物で労災治療する場合

さて治療終盤になると歯の修復装置をどうするかという話になってきますが、労災の場合多くの方が保険外治療を希望します。

このとき労災として支給されるのは8万円で、消費税支払には充てられないというルールがあるそうです。

自費治療の価格決定権は歯科医院にあるので医療機関ごとに違ってきますが、例えば当院で5万円と設定しているジルコニアクラウンを選択する場合、5万円は労災保険者へ請求し、消費税分5000円は患者さんからいただくというのが正しい対応だそうです。

これはこのまま厚労省の講演担当者に質問しご回答いただいた内容になります。

根拠となる通知があるということだったので後日調べたところ下記の通りで、厳密に言えば個別の勘案はするとされていますが原則上限8万円と考えるのが良さそうです。

ご留意いただきたいのは歯医者は制度を理解し治療を提供するのがお仕事で、保険適応額を患者に代わって保険者と交渉するのは職務に含まれません。労災適応範囲および額について保険者と交渉が必要となる方は、歯科医療の観点から診断書を記載しますのでそちらに基づいて雇用主から指示された保険者とご相談いただければとおもいます。


2022年9月22日木曜日

「手が合う」技工士さんとの出会いが重要

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

「健康のために良い材料は何か」という質問は非常によくいただきますが、これは大変複雑な要素が絡んでいます。詳しくは後日論じる予定なのでご期待ください。

今回は少し科学的な切り口からは離れて、歯の治療で使う材料で何を選ぶか以上に、技工士さんと歯医者さんの相性が大事だよねって話をしようと思います。

修復装置のフィット感はむし歯・歯周病ともに予後に大きな影響を与える要素ではありますが、何を使うかよりも技工士さんと歯医者さんの相性のほうがずっと影響が大きいと考えています。

そう感じたのは二世代経営で技工士さんの退職や急病、あるいは前職や大学病院でいろいろな技工士さんたちとお仕事をさせていただいた経験から。

例えば材料学的には鋳造法で制作する金属系材料の方が、CAD/CAM技術や重合法で制作する樹脂系材料よりも精度が良いとされています。しかし相性のいい技工士さんがつくれば材料関係なくピッタリくるので、調整が非常に楽でありがたいです。KIAIで調整しまくってたのがウソのようだ。

この技工士さんと歯医者の相性がよいことを「手が合う」と表現するそうです。お互い手先の技術をウリにしているもの同士、とても良い表現だと感じています。


最近は修復物、入れ歯ともに「手の合う」お仕事ができているので大変ありがたいです。

そんな中で撮ったのが上の写真で、患者さんからも許可を得て院内サンプルとしても活用させてもらっています。

メタルボンドという代表的な保険外治療ですが、技工士さんは左の写真の上部に移っている色見本のわずかな差から、実際の色調を予測して陶材を焼き上げているそうです。素晴らしい色彩感覚ですね。

このように歯のグラデーションの濃淡や、個々人に現れる模様や溝の特徴まで再現するのは保険外治療でなければできません。なぜなら、保険治療で使用される樹脂系材料は経年変化によって変色してしまうからです。実務としても保険治療は色見本のどの色を使うか決める程度で、写真撮影はしません。

とはいえ保険治療でも20年選手30年選手で機能している被せ物は実際に見ています。年数相応にめちゃくちゃ変色するので見た目はともかく、やはり材料が健康に及ぼす影響はさほど大きくないと感じます。

結局はむし歯リスクのコントロールができているかが重要だと感じていますが、それはまた別の機会に。今すぐ知りたいという方は下記の記事をご覧ください。

2022年9月15日木曜日

ツイッターで歯科医師を名乗って発信するならば

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

先日ツイッターの歯科医師を名乗るアカウントが不正確な医療情報を発信していた件について話題になりました。

その中で「歯科医師を名乗り、SNSで不特定多数の一般人に向けて不正確な医療情報を発信することは批判の対象となる」という声が多くあがりました。

これは私が以前から主張していたことで、この考えが大きな広がりを見せたのは嬉しかったです。

今回はこの論点を少し細分化してみたいと思います。


1,歯科医師は技術職人ではなく科学者である

以前は職業訓練校、いまは国家試験準備学校としての性質を強める歯科大学教育では伝えきれていないことですが、歯科医師は科学に立脚した西洋医学の上に成り立っている職業です。

つまり世界標準レベルの研究倫理(リサーチマインド)を具備していることが求められ、それ故に極めて強力な参入規制を伴う国家資格業となっています。

私の所属する大学では数年前より研究倫理に関するオンライン講習を毎年受講することが求められており、大いに勉強させていただいております。

その中で印象的だったのは、「研究者は積極的に他人の研究の批判と追試を行い、批判を受けた者は真摯に受け止める」という内容です。

確かに未だに全ての分野でエビデンスが充実しているわけではありません。いまは泡沫とされる方法も、研究成果によって主役となる可能性はあります。

だから個々人の思想と信条は自由ですが、歯科医師が科学者であるならば相互批判を行い切磋琢磨をするのも職務のうちではないでしょうか。

世界の歯医研究者はそのような過程を通じて自分のアイデアの問題点を明確化し、自説強化のために必要な研究を繰り返してきました。その現時点での到達点がガイドラインやシステマティックレビューに記されているのだと考えています。



2,SNSは人込みの中で拡声器をつかっているようなもの

SNSでこっそり発信する分にはよいのではないかという言説もありますが、それなら鍵アカでどうぞ。

SNSは多くの人の目に触れ、拡散される公共の場です。その中でも最も拡散力の高いツイッターを使って「こっそり」はありません。

匿名・職業不明アカウントで好きにつぶやくならまだしも、歯科医師を名乗って拡声器で違和感のあることを言っていたら、多くの同業者から質問や注意を頂くのは当然のことです。「注意をしてくるな」は前項も踏まえて筋が通らないのではないでしょうか。

一方で様々な批判的私的にもめげずに症例を公表し続ける歯科医も知っています。

わたしはその方の活動は「情報の可視化」「批判も可視化」という観点で大変有意義だとおもっているので、批判にめげず自分の良いと思うスタイルを貫いていくのはそれはそれで「筋が通っている」と感じます。

あとはそのやり取りをみた第三者がどう思うか、が論点になってくるのではないでしょうか。

2022年9月8日木曜日

高級革靴を買う前に、コレだけは知っておくべき3つの知識

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

先日革靴の修理を、職人さんと直接話せる越谷の専門店Glazeblanc (グレイズブラン) さんでやってもらいました。

イギリスの新婚旅行で記念として購入したCheaneyのウィングチップなのですが、アッパーの質感が独特でとても気に入っています。

同じようなものを買おうとおもっても見つからないし、新品を気軽に購入できるような価格でもないので二度目の修理です。

せっかくなので色々直してもらおうと職人さんと入念に打合せをしたのですが、その中で「最初から知っておけたらよかったなぁ」と思ったことをまとめておきます。

なお筆者は衣服に関してはかなりズボラなほうで、コスパ重視と着心地で最低限しか揃えないミニマリストでもあります。

革靴ファンの人にとっては目を覆いたくなるような内容が並ぶので、ちゃんとしている人は手遅れにならないうちに今すぐブラウザバックするんだ。

1,カカトは絶対に踏まない

はい、一発目から来ました。全国の革靴ファンが発狂する大前提知識です。

でもあるんですよ、カカトを踏まざるを得ない状況が。

例えばお座敷の会食で偉い人がトイレに行くとき、下っ端としてはご案内しなきゃいけないわけですよ。優雅にヒモなんて結んでいたら先輩にブッ殺されます。(←育った環境ぉ)

でもね、この革靴のカカトに仕込まれている硬いパーツ、修理しようとすると数万円の上乗せになるんですよ。

それに革靴の量産型か高級かを分ける重要なパーツでもあります。

このカカトの湾曲の立体的加工をどこまでするかは、靴のフィット感を大きく左右します。まさにその靴の機能性の根幹と言われるパーツで、修理しても再現できるかはわかりません。

だからこそアッパーの磨きや傷がどうのというのと同じくらい、高級靴のカカトには気を使う必要があります。


2,ヒモは結びっぱなしにしない

シューホーンを使えばヒモ結びっぱなしにしてもカカト潰さないで履けるじゃない、と思ったそこのあなた。甘いです!

でも合理性と快適な生活を追求する私とは仲良くなれるとおもいます。

その履き方をすると、靴の入り口部分が割けます!

補強修理などはできますが、先ほど言ったフィット感に影響しますので高級靴ほどそういった修理はしないで済むよう配慮したいですよね。


3,革靴の底に穴が開く前にオールソール交換する

革底の靴の履き心地ってサイコーですよね。

ゴム張りすればええやんという人、そもそも高級靴履く必要ある?(←考え方は人それぞれです。喧嘩を売るのはやめろ)

革底の靴の履き心地を維持しようと思う場合、定期的にオールソール交換をする必要があります。

これも靴底に穴が開いて内部パーツにまでダメージが及ぶとまたメンドクサイことになるので注意が必要です!

革底→革底のオールソール交換は1~1.5万円しますが、新品を買えば10万円…。私のコスパ感では適切なタイミングでオールソール交換をしていったほうが、トータル安上がりと感じます。

高級靴は「一生モノ」などと奮発して購入するとおもいますが、こういった維持費は必要になってくるものと留意すべきかなと思います。


まとめ:高級靴を優雅に履きたい人生だった

そういうわけで高級靴を履くのは一日中靴を脱がないか、脱いだとしてもシューホーンを使い紐を結び直せる余裕がある日に限りましょう。

そんな日があんまりない自分にとって高級靴はやや持て余し気味のような気がしますが、新婚旅行の大切な思い出なので修理不可能になるまで大切に使おうと思います。

ちなみにしっかり説明と修理方針をすり合わせができたおかげで、修理の仕上がりは大満足。高級靴の修理にGlazeblanc (グレイズブラン) さんオススメです!

2022年9月1日木曜日

トンデモ歯”スターズでZoom飲み会しました

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

先日トンデモ歯”スターズメンバー+ゲスト1名とオンラインZoom飲み会をやりました!

なんだかんだ全員参加できたのは凄いことで、お話する中でこれだけ真剣に歯科医療のEBM推進に情熱を持っている方がおられるのだなと心強く思いました。


1年近くの活動をほぼハンドルネームでのチャットだけで協力してできてきたのは凄いことですが、改めて話し方や一部の方のお顔などもわかって談話することでより一層信頼関係が深められたような気がします。

話題も「EBMと臨床の分断を埋めるにはどうしたらいいか」という共通の問題意識をもっており、より行動科学的な心情配慮や具体的行動に結びつけるやり方についてはなしたり、何がボトルネックとなって歯科論文上の研究成果が臨床へ広まっていかないかなどを論じました。

その中で私が特に重要だと思ったのは、歯科医師は医師と比べ卒業後病院等にのこり、カンファレンスをすることがない。特に他科と連携するカンファレンスという機会に恵まれず、異なる考え方を持つ指導教官同士が論文ベースでディスカッションするのを見る機会もない、という部分です。

歯科大学病院における若手指導では、指導教官が変わるごとにやり方がかわって、若手側はそれにあわせるしかないというのが現状です。一般開業医に卒後すぐに就職した若手は、なおさらでしょう。

残念ながら今の歯科大学の指導教官で論文ベースで新人にレクチャーできる人材は限られており実現は難しいというのは、リーダーの気まぐれさんとも同じ見解でした。

そこで私のできることとしては、ポストグラジエートで論文の読み方そのものを教えて、EBM思考を普及してトンデモ医療に「それはおかしい」と多くの人が言える状況を作ることではないかと考えています。

歯周病専門医も取得した今、次なる挑戦として取り組んでみようかなと、検討を開始したいとおもいます。