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2022年4月23日土曜日

歯周病治療は年齢によってゴールが違う

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

歯周病治療においてプラークコントロールが重要なのはこれまでも繰り返し発信している通りですが、術者による歯肉の中に潜り込んだ歯石を除去することも重要です。

プラークコントロールのみでも表層の歯肉状態の改善は得られます。しかし深い歯周ポケットの中に歯石があれば、深部での炎症は残り歯周病は進行します。

プラークコントロールの改善と歯石除去は歯周病治療の大前提ですが、そうでないケースも存在します。

それはとくに高齢者の患者さんです。


年齢で一律に評価するわけではありませんが、一般的に後期高齢者に近づくとセルフケアでのプラークコントロールは困難になります。その理由を以下に列挙します。

・正しい歯みがき法という生活習慣の変更が困難
・唾液量や筋力低下による自然な洗い流し効果の減少
・手の運動機能や感覚フィードバックの低下

このような状態でもう一度セルフケアの確立を目指しても現実的に不可能なことも多いし、セルフケアが確立しなければ歯肉縁下歯石の除去を試みても効果が得られにくい場合が多いです。

そういうときは治療のゴール設定を治癒ではなく痛みや腫れといった自覚症状のコントロールとし、歯科衛生士や歯科医が定期的にお口の中をきれいにするプロフェッショナルケア中心の対応にすることもあると思います。

こういった対応は高齢者施設での訪問歯科診療における口腔ケアに近い処置ととらえることもできそうです。

日本歯周病学会より引用

一方で歯周病が発症しはじめる40代・50代の患者さんに同じような処置をするべきではありません。

これはAAP/EFP共同で策定した歯周病新基準におけるグレード評価で説明することができます。

上図のうち骨吸収%/年齢について分かりやすく解説すると、例えば40才で40%以上の骨吸収がある場合は急速な進行(グレードC)であるから要注意という意味です。

そういうわけで70才で歯槽骨吸収が50%という状態などであれば歯周病リスクはそれほど高いものではなく、積極的な歯周病治療をしなくても寿命を迎えるまで歯を維持できる可能性が高くなります。

後期高齢者で歯周病=歯が残っている場合、平均余命と歯周病進行速度の評価によって積極的な歯周病治療が不要と判断する場合があり得る。ゆえにプロフェッショナルケア中心での対応が成り立つと考えるとロジカルだと思います。

一方で30才とか40才で歯槽骨吸収が50%と言う状況であれば歯周病の進行は急速。放置すれば還暦までには総入れ歯不可避という計算になるので、その未来を避けるためには歯肉縁下歯石の除去や歯周外科治療等といった通法に従った積極的な歯周病治療が必須となります。

この様に歯周病治療でも一律の対応ではなく、年齢や体質に応じた適切な治療プランを策定できるとキメ細やかと言えるのではと考えています。

2022年4月13日水曜日

参議院議員会館に行ってきました

こんにちは、東川口の歯医者 中田智之です。

先週になりますが、某国会議員と社会保障制度に関する論点整理を一緒にやってみようということで打合せをしてきました。

サキシルなどで調べながら論じたことから繋がったものと思います。様々なご縁に感謝いたします。
参議院議員会館を訪れるのは貴重な体験でしたが、駅を出てすぐのところで桜と議事堂がきれいだなーと写真とっていたら怒られました(笑) 写真はちゃんと消しました。

国会議員を訪れる方や秘書さんが行きかう会館の空気に触れられたのは貴重な体験でした。

2022年4月6日水曜日

歯みがきスコア測定は毎回必要?

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

しばしば聞かれるのが、毎回のように歯みがきスコアをチェックされて治療に入らない歯医者があるという話です。

これは事実で2000年代初頭に流行ったやり方です。歯医者としてはとても真面目な方なのだろうなぁと思います。

私の後輩にも、そのような歯科医院を作りたいという方がいました。

プラークコントロールを改善しなければむし歯は再発してしまう。歯みがきが十分にできない状態で削って埋めても無意味だ、と熱っぽく語っていたのを思い出します。


当時の私は十分な答えを持っていませんでしたが、今なら答えられます。

それは必ずしも必要ではありません。

まずむし歯の再発予防にはフッ化物の効果的利用と食習慣が大きく関わってきています。歯みがきの水準に関しては、目で見える程度にモサモサとプラークがついていなければ十分でしょう。

以上を踏まえてむし歯の再発に関する諸条件を踏まえて削るか削らないかも含めた治療方針を決定すれば良く、歯みがきスコアは治療方針決定に関してあまり重要ではありません。目視でのプラーク判定、歯肉の状態の観察で十分できると考えています。

「歯を良くみがきましょう」はもう古い?虫歯予防のアップデート – SAKISIRU(サキシル)

最新のむし歯学でバレンタインを迎え撃て!食べ方の工夫と初期むし歯 – SAKISIRU(サキシル)



ただし歯周病の動的治療時(手術前など)にはPCRは重要です。20%にする根拠はないと言われていますが、多くの歯周病治療の文献は20%で行われています。

つまり平均20%の状態で歯周病治療をしなければ、文献上の治療効果を再現できなくてもなんら不思議ではないと考えています。

重要なのは平均20%なので、レンジとしては「がんばると20%台がとれる」ではなく、「良いときで10%台後半がでる」レベルにする必要があると考えています。

さらに歯周病治療後のメンテナンスフェイズでは必須と考えています。

歯周病の再発、歯の喪失に対し、歯みがきスコアは最も重要な先行指標になると考えています。

その根拠はまたこんど。



まとめると以下のように自分の中ではまとめています。
・むし歯治療の場合はよほど歯みがきが苦手な方以外歯みがきスコアの測定は必須ではない。 
・歯周病治療をする場合はメンテナンスフェイズも含めて頻回の歯みがきスコア測定が必要。