歯周病治療においてプラークコントロールが重要なのはこれまでも繰り返し発信している通りですが、術者による歯肉の中に潜り込んだ歯石を除去することも重要です。
プラークコントロールのみでも表層の歯肉状態の改善は得られます。しかし深い歯周ポケットの中に歯石があれば、深部での炎症は残り歯周病は進行します。
プラークコントロールの改善と歯石除去は歯周病治療の大前提ですが、そうでないケースも存在します。
それはとくに高齢者の患者さんです。
年齢で一律に評価するわけではありませんが、一般的に後期高齢者に近づくとセルフケアでのプラークコントロールは困難になります。その理由を以下に列挙します。
・正しい歯みがき法という生活習慣の変更が困難
・唾液量や筋力低下による自然な洗い流し効果の減少
・手の運動機能や感覚フィードバックの低下
このような状態でもう一度セルフケアの確立を目指しても現実的に不可能なことも多いし、セルフケアが確立しなければ歯肉縁下歯石の除去を試みても効果が得られにくい場合が多いです。
このような状態でもう一度セルフケアの確立を目指しても現実的に不可能なことも多いし、セルフケアが確立しなければ歯肉縁下歯石の除去を試みても効果が得られにくい場合が多いです。
そういうときは治療のゴール設定を治癒ではなく痛みや腫れといった自覚症状のコントロールとし、歯科衛生士や歯科医が定期的にお口の中をきれいにするプロフェッショナルケア中心の対応にすることもあると思います。
こういった対応は高齢者施設での訪問歯科診療における口腔ケアに近い処置ととらえることもできそうです。
これはAAP/EFP共同で策定した歯周病新基準におけるグレード評価で説明することができます。
上図のうち骨吸収%/年齢について分かりやすく解説すると、例えば40才で40%以上の骨吸収がある場合は急速な進行(グレードC)であるから要注意という意味です。
そういうわけで70才で歯槽骨吸収が50%という状態などであれば歯周病リスクはそれほど高いものではなく、積極的な歯周病治療をしなくても寿命を迎えるまで歯を維持できる可能性が高くなります。
後期高齢者で歯周病=歯が残っている場合、平均余命と歯周病進行速度の評価によって積極的な歯周病治療が不要と判断する場合があり得る。ゆえにプロフェッショナルケア中心での対応が成り立つと考えるとロジカルだと思います。
後期高齢者で歯周病=歯が残っている場合、平均余命と歯周病進行速度の評価によって積極的な歯周病治療が不要と判断する場合があり得る。ゆえにプロフェッショナルケア中心での対応が成り立つと考えるとロジカルだと思います。
一方で30才とか40才で歯槽骨吸収が50%と言う状況であれば歯周病の進行は急速。放置すれば還暦までには総入れ歯不可避という計算になるので、その未来を避けるためには歯肉縁下歯石の除去や歯周外科治療等といった通法に従った積極的な歯周病治療が必須となります。
この様に歯周病治療でも一律の対応ではなく、年齢や体質に応じた適切な治療プランを策定できるとキメ細やかと言えるのではと考えています。
この様に歯周病治療でも一律の対応ではなく、年齢や体質に応じた適切な治療プランを策定できるとキメ細やかと言えるのではと考えています。