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2021年3月30日火曜日

臨床研修ポートフォリオ賞受賞! 今年度臨床研修修了と次年度に向けて

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

3月中旬で本年度の臨床研修も終わりました。法定の有給は消化させるようにと通達があるので、研修医の3月末はいよいよ本格的に始まる歯医者生活に向けての準備期間、といったところです。

今年は8か月と長期間研修に来てくれましたが、彼の次の活躍場所も既に決まっており、さらなる研鑽を目指して勉強を続けていくことだろうと思われます。

振り返ると昨年はコロナで特別な対応をすることも多く、十分なJob on the trainingとなったか、心残りな部分はありますが、自信をもって伸ばしたといえる分野もありますので、世相を鑑みてできるだけのことはしたのではないかなと思います。

そして研修医自身の努力もあり、ポートフォリオ賞を受賞しました!
これで2人連続(昨年度は研修医おらず)の受賞となります。


さて早速ではあるのですが、次年度の臨床研修の手続きで忙殺されています。

4月はじめには早速、外部研修施設説明の予定が入っています。ここで如何に胸をうつスピーチができるかというところが問われていると思います。

うちのクリニックは残念ながら待合室にピアノがあったり、写真映えするような内装でもないので、今年もあえてのNoスライド、語りだけ一本勝負で行こうと思います(笑)

数々の施設自慢、症例自慢をするライバルたちが、インプラントやってますとか、審美修復の極みを目指しますとか言っている中で、普通に虫歯治療できるのが大事なんじゃないのと国家試験合格して浮ついている連中にガツンとかましてこようかと思います。

普通に治療ができる、というのが一番ニーズのボリュームがあるし、それができなくて悩んでいる中堅を大勢見ています。それができれば代診として就職に困らないし、分院長として十分に役目を果たせるので、堅実な収入のルートになります。インプラントなんて首都圏じゃやりつくしてるよ

その上で地域のニーズを呼んで、どんな専門技能で訴求すればよいか考えれば良いことと思います。「普通の治療」技術を研鑽することは、たいへん重要なことであると、いまからスピーチ原稿を書こうと思います。

2021年3月27日土曜日

衛生士の採用がきまりました!

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

少し前から募集をかけていた歯科衛生士ですが、採用が決まりました!
記事などシェアしてくださった皆様に御礼申し上げます。

残念ながら新規応募はなかったのですが、以前歯科助手の学生バイトをしていた方が、衛生士として就職していただけることに決まりました。

既に受付業務・器具消毒・診療アシストはマスターしている状況からのスタートなので、即戦力です!!


将来的には歯周病学会認定衛生士なども取得していただいて、歯周病治療のメイン戦力になってもらえないかなぁと淡い期待をしています。

まずは「ふつうの」衛生士として、どこにだしても恥ずかしくないように!(だすつもりないけど!)大切に育てたいと思います。

はじめのうちは何かと至らぬ点もあるかと思いますが、温かなご寛容を宜しくお願い申し上げます。


歯科医院としては、夕方から終業までの学生バイト、診療補助業務兼任の臨床技工士を引き続き募集しています。どうぞよろしくお願いいたします。

2021年3月25日木曜日

欧州の歯周病学会の見解。フロスか歯間ブラシか。

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

欧州の歯周病学会から興味深い発信があったので紹介します。本稿にて要約しますが、短い記事で、グーグル翻訳で十分読めるので興味ある方はどうぞ。


(上記記事より転載)

2016年の記事ですが、この中では「フロスはナンセンス・時間の無駄」という記事が世界で多く発信されたと書き出しがあります。私もツイッターで過激な気分になった時はそう言っていることを白状します。

それは2015年の下記レビューによるものです。こちらは専門的な内容なので、読める方だけご覧ください。このレビューは世界中から90名の歯周病の専門家が集まって作成したもので、その判断の過程もすべて記載されています。



この中で「フロスの有効性を示すことができなかった」「歯間ブラシの有効性を支持する」という結果が出ています。

しかし歯間ブラシは無理に使用すると歯肉を損傷する可能性もあり、使用が適さない状況もあることを記事は指摘しています。

最も重要なのは「全ての歯間部の清掃に関して有効かつ外傷を避けるためには専門家の指導が必要」という部分かと思います。


私自身の臨床実感としては、歯間部の清掃に関しては専門家のレクチャーに基づく必要があり、我流でやるくらいならやらないほうが健康リスクが低いと感じています。

その理由は、最適な清掃方法は一人一人違うため、オーダーメイドで個別に考えなければならないからです。

フッ素のように、使用すればだれでも一定の効果を得られるものとは性質が違うものなので、ネットの記事に危機感をあおられ、我流で不適切な歯間清掃器具を使用することのないようお願いしたいと思います。

歯と歯の間の清掃法に不安を覚えたなら、まずは歯医者さんか衛生士さんから、自分自身にあった磨き方を教えてもらい、気になることを全部質問してみることから始めていただけたらと思います。

2021年3月23日火曜日

カンジダ薬は歯周病に効果なし! 勘違いが生まれる背景を解説

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

しばしば歯周炎に抗カンジダ薬(抗真菌薬)が有効という話題・記事が流れますが、アレはデマです。

どちらかというとカンチガイであるといったほうが正確かもしれません。その背景にはなかなか治らない歯周炎に対して、できるだけのことをしようと試行錯誤した結果うまれた誤解だからです。

ただし、そのような誤解も歯周病への不十分な知識による誤った解釈に由来するものなので、歯周炎に対して抗カンジダ薬は効かないというのは揺るぎない事実です。


以上のように、抗生物質の乱用によるカンジダ性歯肉炎の発症、それに対する抗真菌薬の著効、という構図になっています。

これは私自身も目の当たりにしたことがあって、長年歯周病の安定治療をしてきた患者さんが癌の手術を受けて帰ってきたとき、しばらくして歯肉に著しい接触痛がでるという状態になってしまいました。

いままでは歯肉の調子が悪くなっても一時的な抗生物質の投与、その後の歯石とりでコントロールできていたのですが、その時は抗生物質も効かないし、痛みも強く、入れ歯が使えないため食事も苦労するという状態で、どうすれば良いか深く悩みました。

これを師匠に相談したところ、「手術病歴からカンジダ性歯肉炎の疑いがある。抗真菌薬をつかってみよう」とアドバイスを受けました。これがドンピシャ!

一発で痛みも消え、安定した状態になりました。その後癌の主治医にも情報共有したのは言うまでもありません。

こういった臨床体験を通じて、「いくら抗生物質を投与しても改善しない」→「抗真菌薬を投与したら治った!」→「抗真菌薬は歯周病に効く!」というカンチガイが生まれていったのだと思います。


カンジダ性歯肉炎も歯周病の一種だ、というのはその通りですが、そうであればまずカンジダ性歯肉炎の説明をすべきです。

抗生物質の乱用というドクターの不作為だけではなく、外科手術後の重点的な抗生物質の使用や、高齢者の唾液腺機能低下、入れ歯のお手入れ不足でも起こり得ます。

しかし、一般的に歯周病といったワードで指し示すプラーク性慢性歯周炎と明確な区別を行わず、まったく違う病態を故意に混同したのだとしたら悪質なインフォデミック(情報汚染)です。

これは下記学会発行ガイドラインP.54にもある通り、抗真菌薬による歯周病治療の論文は2000年以降、皆無であることからも、歯周病の専門家たちの共通認識であると言えます。



その他の抗生物質に関しては別に論じますが、抗生物質を使用している間は一時的に痛みや腫れが落ち着きますが、病巣はなくならないし病状の進行も止まりません。

残念ながら現代科学において「飲み薬だけで歯周炎を治療する」ことは不可能です。

既に十分に確立・検証された、ごく一般的な歯周病治療を受けて、歯周病を治していきましょう。

2021年3月18日木曜日

フロスに効果はあるか

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

虫歯・歯周病予防についてフロスをつかったほうが良いか、という質問を多くいただきますが、私は「特別な理由がなければ必要ない」と答えています。

近年発表された多くの論文で、フロスの使用が虫歯予防につながる可能性は小さく、統計的に有意な差が見られないことが示されています。


かつて(1990年代)は「フロス(を使う)か(歯を失って)死か」とまで言われたフロスですが、その役割はいまやフッ素の適正使用、もしくは歯間ブラシに譲っており、一般人が予防目的でフロスを使用する必要はないかもしれない、というのが最新の見解になっています。

フッ素や歯間ブラシの適正使用は長くなるので別の機会に論じることにします。フッ素は万人に進められますが、歯間ブラシは慎重な応用が必要なため、いまここで判断せず、かかりつけの歯医者さんに聞いてみてください。



さて、ではなぜフロスは予防効果があまり見られないのでしょうか。

その理由は一般人がプロのレクチャーなしに適正使用するのは極めて困難であるためとされています。

フロスはただ歯と歯の間を通過させるだけではダメです。下記動画をご覧ください。

(参考引用)サンスターより


動画では1つの歯と歯の間に関して、2つの歯の面を意識して使用するように説明されています。

実際には歯の内側と外側では面の角度が違うため、1つの歯と歯の間に関して、4つの面を意識して使用しなければなりません。

そうなると全ての部位に対してフロスを適正利用しようとすると、26(歯と歯の間の数)×4(歯面)=104(歯面)を意識しなければなりません。これは無理です。



私がフロスを患者さんに指示する場合は、例えば歯と歯が重なりあってブラシが届かない部位など、数か所程度に関してキッチリ使用してもらいます。

逆に普通に歯が並んでいるのであれば、そこは歯ブラシを適切に使用すれば、プラークコントロールによる予防としては十分と考えています。

2021年3月17日水曜日

どんなに嫌がる子でも数年たてば…

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

歯医者さんにくると号泣してしまう子や、逃げ出して椅子にも座らない子供というのは多いです。

保護者のかたから申し訳ないといってくださることも多いですが、こちらとしてはそこそこ慣れっこなのでお気になさらず、です。咬まれるのも想定の範囲内です(笑)



さて、これは意見の分かれるところですが、特に5才以下で強く嫌がる場合、個人的には完全な治療をするよりも優先すべきことがあると考えています。

痛みが強くて食事に支障がある場合は別ですが、抑えつけたりは必要最小限として、怖がらせないで治療しようと考えています。



子供の頃の記憶というのは凄いもので、私の出会った患者さんで最も歯科にトラウマを持っていた方は、自分の意思と無関係に私が接近するとブルブルと震えだし、口を堅く閉じてしまう、50代の男性でした。

自分が口を開けているのか閉じているのかさえ最後には分からなくなってしまうという状態で、よほど大変な経験をなさったんだと思います。



子供の歯は生え変わりますし、相当悪い歯を放置しているのでなければ、大人の歯が悪くなることはありません。

また子供の1年間の精神的成長というのは大きなもので、3歳でできなかった治療が4歳ならできた、ということはままあります。

大人の歯に影響を与えないのは大前提として、子供が極端に治療を拒否する場合は、虫歯の進行を遅らせる処置などで上手くコントロールし、精神的に成長したところでしっかり治療をする、というやり方もよくやります。

歯医者さんをキライにならず、治療を受けられるよう育ってくれれば、生涯を見渡す視点で有益ではないかと考えています。

そんな風に感じたのは、今年7歳になるお子さんたちの治療をしているときでした。

この子もあの子も、3歳で初めて来た頃は大変だったなぁ、と。

あの時沢山あった虫歯治療済みの歯はほとんど生え変わって立派な大人の歯に。そして予防処置や矯正の相談で、今でもご縁が続いています。

2021年3月15日月曜日

変わる医療の常識。歯科レントゲンの防護エプロンが姿を消す?

ご存知でしょうか、いま一部の大学病院では、X線撮影時の防護エプロンを使用していないそうです。

X線が体の余計な部位に被爆しないよう防護する鉛エプロンですが、X線がぶつかると散乱線が生じます。このランダムな方向に発生する散乱線が、鉛エプロンで覆われない甲状腺などに影響を与える可能性があるとされています。

もともと鉛エプロンは子宮や睾丸といった臓器の防護を意識されていましたが、これは歯科X線撮影の照射部位から大きく離れているため、ほとんど影響がないといまでは考えられているようです。X線は距離が離れると著しく減衰するので、さもありなんと感じるところです。

これらを総合的に鑑みて、今まで常識的に使用されてきたX線防護用の鉛エプロンは、もしかしたら使わないほうが良いかもしれないというのが昨今の議題でした。


本件は既に歯科レントゲンに関する大手学会から視診がでています。


読みやすい資料なので気になる方はリンク先をご参照ください。内容としては下記のとおりでした。

1,防護エプロンの実効性はほとんどなく、患者の安心のために使われる 
2,使用を求めるわけでも、禁止するわけでもない 
3, 撮影に失敗して再撮影するより、鉛エプロンを使用しないほうがリスクは低い

以上から、私自身はやや迎合的ではありますが当分の間は「患者の安心のために」鉛エプロンの使用を継続します。

一方で例えば背中が曲がっている方や、肩の肉付きが良い方で、鉛エプロンを着用することで撮影が困難になる場合がこれまで多くありました。このとき鉛エプロンが撮影時に必須でないことを念頭に置き、非着用で確実に撮影したほうが良さそうです。

これはガイドラインにもありますが、防護エプロンをするよりも、撮影失敗からの再撮影による余分なX線被爆を避けたほうが良いという考え方に基づきます。


大学でエプロンを使用しないという教育がされている以上、次第に防護エプロンは姿を消していくかもしれません。

このように医療の常識が180度変わってしまうことは、珍しくありません。例えば昔は抜歯時に血液サラサラのお薬を中止していましたが、いまはいつも通り服用した状態で抜歯することが推奨されています。これは抜歯後の出血が止まらないリスクよりも、血栓による脳梗塞・心筋梗塞のリスクのほうが危険度が高いからです。

歯医者に行く際はこのようにこれまでとやり方が変わっている場合は多々ありますので、皆様のご理解を頂きたく思います。その際、疑問に感じたことは質問し、医院スタッフからしっかりとご説明があることは前提だと考えております。

2021年3月14日日曜日

こどもの虫歯は親の責任?

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

先日ネットでちょっと話題になったのは、グランドジャンプで公表連載中の漫画「デンタルクエスト」に関してです。

このツイートに一部掲載された内容において、「子供の虫歯は親の責任なのか」という問題提起がされています。これに対し、歯医者から様々な意見がでてきました。それだけこのテーマは簡単なようで複雑なものだということかもしれません。

作者のツイートにもありますがこれは作品のごく一部なので、最新話全体を通じてどのような着地点を見出すのか、とても気になりますね!! 私も読むのが楽しみです!(まだ読んでいない)


さてこのテーマに関して私が以前から感じていることを以下にまとめます。

1,歯科実態調査を見ても分かるようにここ数十年で歯みがきは相当浸透してきており、今や歯を磨かない人はめずらしい。そういった世代が親になってきている中、子供の歯をしっかり磨いている親が大多数です。実際一部を除いて口腔衛生は良好である。ゆえに「歯をよく磨こう」という啓蒙は、やや時代に即していないと捉えています。


2,それでも歯みがきができない・やらない人たちがいる。この人たちはおそらく歯みがきが「できない・やらない」何らかの理由がある。それは子育てや介護などで日々の生活が忙しすぎるとか、部活で歯みがきする間もなく就寝するとか、歯肉が過敏で歯ブラシを辛く感じるとか、なんらかの障碍もしくは障碍グレーゾーンを抱えているか、等かもしれない。ここに「歯をよく磨こう」といっても上滑りするだけなので、「何らかの理由」に迫らなければ変わっていかない。


3,そうではなく一般的に歯みがきができているのに虫歯になっていくのは、2つの理由が考えられる。一つは生活習慣の間違い。例えば歯みがきしているけど夜間にスポーツドリンクやジュースを与えている等。夜間の水分補給は水が正しい。他には継続的にお菓子を食べていること。食後30分しないと歯の再石灰化は起こらないため、ダラダラ長時間食べるのは虫歯リスクが高い。これはジュースを30分ごとに飲むなどでも同じ。日中の水分補給も水や
麦茶といった無糖のものが望ましい。


4,それでも改善しないのは、子供自身の虫歯感受性によるものの可能性が高い。これは遺伝的な影響も強いため、両親が虫歯がちだとそうなる可能性が高くなる。この時は宿主因子の底上げとしてのフッ素による虫歯予防と、二次予防としての定期健診による早期発見が重要になってくるので、プロフェッショナルによる手厚い管理が必要かもしれない。


5,一方で虫歯予防としてのフロスなどはあまり有効性が示されておらず、歯と歯の間の虫歯になったからといってその原因を「子供の歯みがきにフロスをしていなかったから」という解釈をするのには強い違和感がある。


雑然と整理できていない所感ですが、今後まとめてどこかのウェブメディアでも論じたいと考えています。

とくに5について、私の原体験として強く印象に残っているのは、学生実習として大学病院の小児科のアシストについていた頃、非常に真面目そうな親が子供に虫歯ができたこととして、フロスの未使用を指摘されていた時の印象が強いです。

大人しく歯みがきさせてくれる子供は少ないです。そんななかでフロスの使用は親の負担が非常に大きくなります。

既に研究ベースでは隣接面齲蝕に対し、フロスでの予防効果はほとんどなく、フッ素を使用するとプラークをも貫通して統計的に有意な虫歯予防効果を発揮することが明らかになっています。

正しいフッ素の使い方を知れば、歯みがき後のうがいもしなくてよく、歯みがき粉をある程度飲み込んでも構わないことがわかります。つまり、親は労力を減らしつつ、予防効果の高い方法を取ることができます。


なんでも「やれ、やれ」という予防の時代は終わったと考えています。これからは「合理的に、楽に」やる予防というのが発展していく局面かもしれない。なんてかんがえています。


ところでデンタルクエストは、ところどころ意見の違うところはありますが、全体的にしっかり勉強して書かれた漫画です。ぜひ多くの皆様に読んで欲しいと思います!!


~追記~


歯医者さんも納得のオチになっているようです。

そういえばあくまで一般論の話として、ネタバレしたほうが内容が気になって購入率が上がるそうですね。



2021年3月13日土曜日

歯科衛生士の局所麻酔(その4) 普及を妨げる「通報リスク」

ここまで法的、技術的に歯科衛生士が十分な知識を訓練指導を受け、歯科医師の管理責任のもと局所麻酔を実施することに問題はなく、医療制度上も合理的であることを説明してきました。

しかしなぜ「現状でも認められている」のに普及していかないのでしょうか。

ここには開業歯科医が恐れる「通報リスク」があります。

非医療従事者目線で、歯科衛生士が局所麻酔を打つのは一般常識としてNGと考えられているだろうと考えられます。

近年のコンプラ意識の向上に合わせ、歯科レントゲン撮影の撮影ボタンの押下を歯科助手に任せていたなどといった違法行為に関して、行政に通報される事例が良くも悪くも増えてきています。

当然現在の世論の中で歯科衛生士が局所麻酔を打つと、例え合法な行為だとしてもその歯科医院は通報され、行政の指導監査を受けるリスクが高くなります。

これを回避するためには、歯科衛生士が十分な局所麻酔に関する研修をうけた「証明書」などを行政に提出する必要があるかもしれません。

本来は方で認められている行為なのに、あたらめて「証明書」が必要になるというのは本末転倒な気がしますが、現実的な落としどころとして歯周病学会などは考えているかもしれません。


前述したようにドクターの独占業務を減らし、歯科衛生士や看護師などコ・メディカルに対して規制緩和していくことは、医療行政の観点でも適正な医療資源配分になります。

またコ・メディカルは短大卒・専門学校卒も多いことから、ドクターの独占業務縮小は軽学歴層の雇用創出にもつながるのではないかと考えています。

歯科衛生士の局所麻酔というテーマは小さいようでいて、コロナで話題になっている医療財政・医療資源適正配分という大テーマの端緒でもあるとみると、面白いのではないかなと考えています。


読者の皆様におかれましても、このような医療体制の変化に応じて歯科衛生士が局所麻酔を行ったとしても、疑問があるならば通報の前に、医院スタッフにどのような研修指導で安全を担保しているのかお問い合わせしてから判断していただけると嬉しいなぁと考えております。

*2021年3月現在、当院では歯科衛生士に局所麻酔を打ってもらうことはありません。

2021年3月12日金曜日

歯科衛生士の局所麻酔(その3) 衛生士が麻酔を打つのは安全か

歯科衛生士による局所麻酔ですが、もちろん歯医者からも批判の声は上がっています。

その理由は主に2つで、一つはこれまで麻酔刺入時になるべく痛くないように創意工夫を続けてきた真面目な歯医者たちです。

しかしこれに関しては麻酔がヘタな歯医者もいる中で、たまたまカンがよくてうまい歯科衛生士も登場するだろうということで、規制を維持する理由にはならないと思います。今まで痛くない麻酔をウリにしてきた歯医者は、そのストロングポイントを維持するために、自分の培ってきた知見を歯科衛生士に教えることだってできるでしょう。


もう一つは業界としては現実的な理由として、独占業務の堅持です。なるべく多くの仕事を独占業務として維持していくことで、業界としてのニーズが保護され、構成員数も大きくなれば影響力にも関わってきます。


しかしこれは諸刃の剣でもあり、今まさに医療現場では勤務医たちが「独占業務」の雑事に忙殺され、高レベルに培ってきた頭脳を活かせないでいます。また、同時にワクチン接種やPCR検査などを迅速に拡大できないのも、利用者のリスクと利便性の観点ではなく、「なるべく多くの」独占業務を堅守したい業界としての生存戦略も関わる問題だからです。

あたりまえのことではありますが、歯科衛生士や看護師・放射線技師などのコ・メディカルにできるだけ多くの仕事を任せるよう規制緩和していくのは、医療資源の適正配分につながります。

翻って歯周病学会の発信は、歯科衛生士の職業地位向上、医療資源適正配分の観点から、先進的であるものと私は高く評価しています。



*次回、通法リスクに関して
*その1,その2はブログ下部のアーカーブよりご覧ください

2021年3月11日木曜日

常識を覆す!? 歯科衛生士の局所麻酔を歯科大手学会が支援!(その2)

この問題を論じる予備知識として、歯科衛生士は局所麻酔を安全に行える技能と知識があるかという点みていく必要があるでしょう。

私は「現状必ずしも全員がすぐにできるとは言えない」としたうえで、「さほど習得難易度が高いわけでもないし、危険性が高いわけでもない」と考えています。

例えば医師ではない看護師も、採血を行ったり、点滴によって一部の薬剤を注射針を介して患者に接種させることは行っています。実際に行っているかはともかく、法的観点では皮下注射やワクチン接種も認められているようです。


上記記事の議論においても、「その注射法が安全であるか」というのが線引きとしてあると思います。

歯科局所麻酔は粘膜下浸潤麻酔と分類され、血管などに直接流し込むわけではありません。

刺入部位も太い血管などがある場所というのはある程度分かりきっており、ある程度指導すれば歯科衛生士でも十分に実施が可能と考えております。

またドクターが行ったとしてもランダムに走行する末梢血管の枝に流し込んでしまうことや、精神的ストレスからくる神経性ショックによる意識障害は起こりうるし、これらは予測不可能でもあります。これらの点については緊急対応が歯科医院単位で十分に行えるようにトレーニングできているかが重要です。

むしろ患者さんごとの緊張しやすさや、全身疾患を把握して局所麻酔を実施するかどうかの判断、頭脳労働部分についてドクターが担当し、責任を負っていくのが良いのではないでしょうか。


もちろん私としても局所麻酔の中でも神経束を狙う伝達麻酔等は、歯科衛生士が行なえるかは慎重に判断したほうが良いと考えています。


*次回、規制緩和の向かい風となる通法リスクに関して。

2021年3月10日水曜日

常識を覆す!? 歯科衛生士の局所麻酔を歯科大手学会が支援!(その1)

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

歯科分野でも会員数が多い歯周病学会から、「歯科衛生士の浸潤麻酔を支援し、教育の機会を提供する」という、これまでの常識を覆す見解が発表されました。




歯科衛生士が歯科麻酔をして良いのかというテーマは以前より議論されていました。昨年には日本歯科医学振興機構が主催する衛生士に対する局所麻酔の講習会に、多くの歯医者が賛否両論を示しました。

どちらかというと知名度としては限定的な日本歯科医学振興機構の「独断専行」と捉える向きが多く、当時の評価としては「炎上した」という表現がちかいかもしれません。




しかし高い知名度と会員数を誇り、これまでもアカデミックな立場から歯科医療を牽引してきた日本歯周病学会から同様の発信が行われたインパクトは大きく、多くの歯医者が成り行きを見守っているという状況です。

このように歯周病学会が歯科衛生士の業務拡大に積極的なのは、背景として学会認定衛生士などを育ててきた背景があります。

ご存知のとおり歯周病治療では歯科衛生士は大きな役割を果たします。歯周病学会は衛生士向けの講演会も多数持っていますし、そのようにしっかり育てた衛生士に、歯石取りでも必要になってくる局所麻酔も任せていきたいという流れは自然だと感じます。

(次回、局所麻酔の手技の難易度。次々回、無視できない通法リスク)

2021年3月8日月曜日

[挑戦開始] 毎日ブログ更新チャレンジ始めます!

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

今日から毎日ブログ更新チャレンジを始めようと思います!!!


ブログはもはや時代遅れなどという話もありますが、例えば個人ブログでアフィリエイト広告で稼ぐ、というのは確かに難しいと言われています。

しかしブログ毎日更新という字面のインパクトは強いのか、それが様々なきっかけに繋がった話を聞きます。

こちらの和合さんは、1年半近く毎日ブログを書き続けた結果、川崎市の広報雑誌に記事が載ったり見知らぬ人から人生相談を受けるようになったそうです。すごい。


もともと毎日ブログ更新を和合さんに進めたのは音喜多参議院議員で、氏も学生時代から毎日ブログ更新を続けており、都議時代にはそれがホリエモンの目にとまり、メディア進出のきっかけになったそうです。

音喜多氏の参議院議員当選前後から、その影響を受けて多くの人がブログ毎日更新に挑戦しましたが、継続できているのは私の知る限り和合さんだけです。

私は別のブロガー師匠から「継続がなにより重要」と薫陶を受けており、週2ブログ更新はずっと続けていて「アゴラ」や「ややリバ通信」などにも掲載させていただくという機会を得ました。

ただ今後の発信として「ブログ転載」でなく「オリジナル記事」を求められる流れになってきており、どのように両立させていくかというのは課題でした。

その部分については明日書こうと思います!

こんな感じで毎日やる、というのは生活のリズムにうまく取り入れていけば、かえって楽なんじゃないかなと考えています。

それではどれだけ続くか、こうご期待ということで!!

2021年3月1日月曜日

【23年4月4日加筆】花粉症でも抜歯注意!? 免疫療法薬で危険な副作用

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

ツイッターは発信のツールとしてだけでなく、様々な医科・歯科の専門知識が入ってくるので、重宝して使っています。

そんな中で花粉症治療薬使用時にお口の外科治療で、あやうく窒息の危険性という話が飛び込んできました。


シダキュアは微量のスギ花粉成分を体内に取り込ませることで、次第にスギ花粉を起こしにくくするお薬で、数年間毎日、花粉の飛んでいない季節も使用し続けるのだそうです。

その使用法は舌下投与というもので、舌の下の薄い粘膜を通じて服用するよりも早く血中に取り込ませる方法がとられています。


今回は歯周病の外科治療を行ったことで、創部から高い濃度のお薬が体内に入り、強いアレルギー反応を起こしたと考えられます。お口の中に傷があれば同様のことが起こりうるので、抜歯や歯周病以外でのお口の外科手術でも同様のことが起こる可能性があります。

特に奥歯近辺でアレルギー反応が起こると、気道に至る粘膜が腫れて呼吸を妨げ、最悪窒息のリスクがあるかもしれません。

特に子供は体格と比較して浮腫などが大きく出やすいため、乳歯抜歯などに関しても注意が必要になってくるかもしれません。シダキュアは5才以上から使用可能です


シダキュアはメーカーからも抜歯に関して注意書きがありますが、この情報は必ずしも歯医者さんのうちで周知されているわけではありません。シダキュアの販売開始が2018年ということもあり、歯科大学教育ではまだ取り上げられていませんし、業界全体としても認知されていないのではないかと危惧しています。

お医者さんも抜歯には注意を払っていますが、歯周病治療で外科処置が行われるのは盲点だった、ということらしいです。




これまで患者さんから花粉症の申告があったとしても、抗ヒスタミン薬などはほとんど歯の治療に影響することはないため、特に留意する必要はありませんでした。

これからは花粉症の飛んでいない時期も含めて、シダキュアの使用を確認した上で治療を進めていく必要があるかもしれません。

また、シダキュアを使用していたとしても外科治療をしなければリスクはないし、必要であれば一時的な休薬での対応なども可能だと思うので、「シダキュアを使っていると歯医者にかかれない」もしくは「シダキュアは危ない」などとは考えないでください。
歯医者としても、例えば心臓が悪いと言われれば、ステントが入っているかもしれないし、血液サラサラのお薬を使っているかもしれない、と連想して聴取するよう努めていますが、今回のシダキュアははっきり言って知りませんでした

多くの他の歯科医師も知らないことと思うので、患者さんの側からも使用者はしっかり申告してもらい、私からは歯科医師会などに報告していこうと考えています。

スギ花粉にシダキュアがあるように、ダニアレルギーに対してミティキュアといった薬剤もあるようなので、「花粉症」や「ハウスダスト」といった患者さんからの申し出に対し、少し気にしていった方がよさそうだな、と感じました。


~追記~

小児科専門医・小児歯科専門の先生からコメントを頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。このようにSNSで情報共有・意見交換ができるのは大変有意義なことと感じます。

引用にあるとおり休薬に関しては自己判断せず、主治医の指示を求めるのが原則ですので、読者の皆様も留意していただきたくお願いいたします。



~追記(2023年4月4日)~

昨日より複数の方面から、「シダキュア・ミディキュアは歯科治療でアナフィラキシーになるから危険」といった情報が広まっていると聞きました。

これまでシダキュア・ミディキュアに関する私や小児歯科専門医ニコ先生の発信の中では、「アナフィラキシー」といった表現は使っておりません

本件に関して鳥居製薬に有志が問い合わせたところ、下記の回答を得ています。
2022.8までの報告では歯科治療でのアナフィラキシーはないとのこと。 事例として、シダキュアでは抜歯後倦怠感の1症例、ミティキュアでは矯正装置の傷に反応したかは不明ではあるものの息苦しさの1症例、両剤服用患者にて抜歯部位の腫脹の1症例。以上3症例を認めたようです。 休薬に関しては、明確なガイドラインはなく、術前の休薬はせず、術後止血確認できれば服用再開でよいのではとの事です。
より厳密に対応するなら、①抜歯当日より服薬中断は必要。②服薬再開については患者ごとの評価が必要。などといった形が適切かと思います。

シダキュア・ミディキュアは5才以上から使用される薬剤で、口腔粘膜に損傷がある状態で使用すると浮腫や倦怠感を惹起する可能性があるため、乳歯抜歯を含め注意が必要です。

一方でリスクを重く見るあまり抜歯や歯科治療そのものを忌避する必要はなく、医師・歯科医師の十分な対診のもと必要な加療を行うのが適切な対応ではないでしょうか。

本件については可及的速やかに歯科系学会等からガイドライン・ポジションペーパーを出すべきだと考えており、私も出来る限りの働きかけをしていこうと思います。