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2021年3月1日月曜日

【23年4月4日加筆】花粉症でも抜歯注意!? 免疫療法薬で危険な副作用

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

ツイッターは発信のツールとしてだけでなく、様々な医科・歯科の専門知識が入ってくるので、重宝して使っています。

そんな中で花粉症治療薬使用時にお口の外科治療で、あやうく窒息の危険性という話が飛び込んできました。


シダキュアは微量のスギ花粉成分を体内に取り込ませることで、次第にスギ花粉を起こしにくくするお薬で、数年間毎日、花粉の飛んでいない季節も使用し続けるのだそうです。

その使用法は舌下投与というもので、舌の下の薄い粘膜を通じて服用するよりも早く血中に取り込ませる方法がとられています。


今回は歯周病の外科治療を行ったことで、創部から高い濃度のお薬が体内に入り、強いアレルギー反応を起こしたと考えられます。お口の中に傷があれば同様のことが起こりうるので、抜歯や歯周病以外でのお口の外科手術でも同様のことが起こる可能性があります。

特に奥歯近辺でアレルギー反応が起こると、気道に至る粘膜が腫れて呼吸を妨げ、最悪窒息のリスクがあるかもしれません。

特に子供は体格と比較して浮腫などが大きく出やすいため、乳歯抜歯などに関しても注意が必要になってくるかもしれません。シダキュアは5才以上から使用可能です


シダキュアはメーカーからも抜歯に関して注意書きがありますが、この情報は必ずしも歯医者さんのうちで周知されているわけではありません。シダキュアの販売開始が2018年ということもあり、歯科大学教育ではまだ取り上げられていませんし、業界全体としても認知されていないのではないかと危惧しています。

お医者さんも抜歯には注意を払っていますが、歯周病治療で外科処置が行われるのは盲点だった、ということらしいです。




これまで患者さんから花粉症の申告があったとしても、抗ヒスタミン薬などはほとんど歯の治療に影響することはないため、特に留意する必要はありませんでした。

これからは花粉症の飛んでいない時期も含めて、シダキュアの使用を確認した上で治療を進めていく必要があるかもしれません。

また、シダキュアを使用していたとしても外科治療をしなければリスクはないし、必要であれば一時的な休薬での対応なども可能だと思うので、「シダキュアを使っていると歯医者にかかれない」もしくは「シダキュアは危ない」などとは考えないでください。
歯医者としても、例えば心臓が悪いと言われれば、ステントが入っているかもしれないし、血液サラサラのお薬を使っているかもしれない、と連想して聴取するよう努めていますが、今回のシダキュアははっきり言って知りませんでした

多くの他の歯科医師も知らないことと思うので、患者さんの側からも使用者はしっかり申告してもらい、私からは歯科医師会などに報告していこうと考えています。

スギ花粉にシダキュアがあるように、ダニアレルギーに対してミティキュアといった薬剤もあるようなので、「花粉症」や「ハウスダスト」といった患者さんからの申し出に対し、少し気にしていった方がよさそうだな、と感じました。


~追記~

小児科専門医・小児歯科専門の先生からコメントを頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。このようにSNSで情報共有・意見交換ができるのは大変有意義なことと感じます。

引用にあるとおり休薬に関しては自己判断せず、主治医の指示を求めるのが原則ですので、読者の皆様も留意していただきたくお願いいたします。



~追記(2023年4月4日)~

昨日より複数の方面から、「シダキュア・ミディキュアは歯科治療でアナフィラキシーになるから危険」といった情報が広まっていると聞きました。

これまでシダキュア・ミディキュアに関する私や小児歯科専門医ニコ先生の発信の中では、「アナフィラキシー」といった表現は使っておりません

本件に関して鳥居製薬に有志が問い合わせたところ、下記の回答を得ています。
2022.8までの報告では歯科治療でのアナフィラキシーはないとのこと。 事例として、シダキュアでは抜歯後倦怠感の1症例、ミティキュアでは矯正装置の傷に反応したかは不明ではあるものの息苦しさの1症例、両剤服用患者にて抜歯部位の腫脹の1症例。以上3症例を認めたようです。 休薬に関しては、明確なガイドラインはなく、術前の休薬はせず、術後止血確認できれば服用再開でよいのではとの事です。
より厳密に対応するなら、①抜歯当日より服薬中断は必要。②服薬再開については患者ごとの評価が必要。などといった形が適切かと思います。

シダキュア・ミディキュアは5才以上から使用される薬剤で、口腔粘膜に損傷がある状態で使用すると浮腫や倦怠感を惹起する可能性があるため、乳歯抜歯を含め注意が必要です。

一方でリスクを重く見るあまり抜歯や歯科治療そのものを忌避する必要はなく、医師・歯科医師の十分な対診のもと必要な加療を行うのが適切な対応ではないでしょうか。

本件については可及的速やかに歯科系学会等からガイドライン・ポジションペーパーを出すべきだと考えており、私も出来る限りの働きかけをしていこうと思います。