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2021年3月13日土曜日

歯科衛生士の局所麻酔(その4) 普及を妨げる「通報リスク」

ここまで法的、技術的に歯科衛生士が十分な知識を訓練指導を受け、歯科医師の管理責任のもと局所麻酔を実施することに問題はなく、医療制度上も合理的であることを説明してきました。

しかしなぜ「現状でも認められている」のに普及していかないのでしょうか。

ここには開業歯科医が恐れる「通報リスク」があります。

非医療従事者目線で、歯科衛生士が局所麻酔を打つのは一般常識としてNGと考えられているだろうと考えられます。

近年のコンプラ意識の向上に合わせ、歯科レントゲン撮影の撮影ボタンの押下を歯科助手に任せていたなどといった違法行為に関して、行政に通報される事例が良くも悪くも増えてきています。

当然現在の世論の中で歯科衛生士が局所麻酔を打つと、例え合法な行為だとしてもその歯科医院は通報され、行政の指導監査を受けるリスクが高くなります。

これを回避するためには、歯科衛生士が十分な局所麻酔に関する研修をうけた「証明書」などを行政に提出する必要があるかもしれません。

本来は方で認められている行為なのに、あたらめて「証明書」が必要になるというのは本末転倒な気がしますが、現実的な落としどころとして歯周病学会などは考えているかもしれません。


前述したようにドクターの独占業務を減らし、歯科衛生士や看護師などコ・メディカルに対して規制緩和していくことは、医療行政の観点でも適正な医療資源配分になります。

またコ・メディカルは短大卒・専門学校卒も多いことから、ドクターの独占業務縮小は軽学歴層の雇用創出にもつながるのではないかと考えています。

歯科衛生士の局所麻酔というテーマは小さいようでいて、コロナで話題になっている医療財政・医療資源適正配分という大テーマの端緒でもあるとみると、面白いのではないかなと考えています。


読者の皆様におかれましても、このような医療体制の変化に応じて歯科衛生士が局所麻酔を行ったとしても、疑問があるならば通報の前に、医院スタッフにどのような研修指導で安全を担保しているのかお問い合わせしてから判断していただけると嬉しいなぁと考えております。

*2021年3月現在、当院では歯科衛生士に局所麻酔を打ってもらうことはありません。