この問題を論じる予備知識として、歯科衛生士は局所麻酔を安全に行える技能と知識があるかという点みていく必要があるでしょう。
私は「現状必ずしも全員がすぐにできるとは言えない」としたうえで、「さほど習得難易度が高いわけでもないし、危険性が高いわけでもない」と考えています。
例えば医師ではない看護師も、採血を行ったり、点滴によって一部の薬剤を注射針を介して患者に接種させることは行っています。実際に行っているかはともかく、法的観点では皮下注射やワクチン接種も認められているようです。
上記記事の議論においても、「その注射法が安全であるか」というのが線引きとしてあると思います。
歯科局所麻酔は粘膜下浸潤麻酔と分類され、血管などに直接流し込むわけではありません。
刺入部位も太い血管などがある場所というのはある程度分かりきっており、ある程度指導すれば歯科衛生士でも十分に実施が可能と考えております。
またドクターが行ったとしてもランダムに走行する末梢血管の枝に流し込んでしまうことや、精神的ストレスからくる神経性ショックによる意識障害は起こりうるし、これらは予測不可能でもあります。これらの点については緊急対応が歯科医院単位で十分に行えるようにトレーニングできているかが重要です。
むしろ患者さんごとの緊張しやすさや、全身疾患を把握して局所麻酔を実施するかどうかの判断、頭脳労働部分についてドクターが担当し、責任を負っていくのが良いのではないでしょうか。
もちろん私としても局所麻酔の中でも神経束を狙う伝達麻酔等は、歯科衛生士が行なえるかは慎重に判断したほうが良いと考えています。
*次回、規制緩和の向かい風となる通法リスクに関して。