「健康のために良い材料は何か」という質問は非常によくいただきますが、これは大変複雑な要素が絡んでいます。詳しくは後日論じる予定なのでご期待ください。
今回は少し科学的な切り口からは離れて、歯の治療で使う材料で何を選ぶか以上に、技工士さんと歯医者さんの相性が大事だよねって話をしようと思います。
修復装置のフィット感はむし歯・歯周病ともに予後に大きな影響を与える要素ではありますが、何を使うかよりも技工士さんと歯医者さんの相性のほうがずっと影響が大きいと考えています。
そう感じたのは二世代経営で技工士さんの退職や急病、あるいは前職や大学病院でいろいろな技工士さんたちとお仕事をさせていただいた経験から。
例えば材料学的には鋳造法で制作する金属系材料の方が、CAD/CAM技術や重合法で制作する樹脂系材料よりも精度が良いとされています。しかし相性のいい技工士さんがつくれば材料関係なくピッタリくるので、調整が非常に楽でありがたいです。KIAIで調整しまくってたのがウソのようだ。
この技工士さんと歯医者の相性がよいことを「手が合う」と表現するそうです。お互い手先の技術をウリにしているもの同士、とても良い表現だと感じています。
そんな中で撮ったのが上の写真で、患者さんからも許可を得て院内サンプルとしても活用させてもらっています。
メタルボンドという代表的な保険外治療ですが、技工士さんは左の写真の上部に移っている色見本のわずかな差から、実際の色調を予測して陶材を焼き上げているそうです。素晴らしい色彩感覚ですね。
このように歯のグラデーションの濃淡や、個々人に現れる模様や溝の特徴まで再現するのは保険外治療でなければできません。なぜなら、保険治療で使用される樹脂系材料は経年変化によって変色してしまうからです。実務としても保険治療は色見本のどの色を使うか決める程度で、写真撮影はしません。
とはいえ保険治療でも20年選手30年選手で機能している被せ物は実際に見ています。年数相応にめちゃくちゃ変色するので見た目はともかく、やはり材料が健康に及ぼす影響はさほど大きくないと感じます。
結局はむし歯リスクのコントロールができているかが重要だと感じていますが、それはまた別の機会に。今すぐ知りたいという方は下記の記事をご覧ください。