先日ツイッターの歯科医師を名乗るアカウントが不正確な医療情報を発信していた件について話題になりました。
その中で「歯科医師を名乗り、SNSで不特定多数の一般人に向けて不正確な医療情報を発信することは批判の対象となる」という声が多くあがりました。
これは私が以前から主張していたことで、この考えが大きな広がりを見せたのは嬉しかったです。
今回はこの論点を少し細分化してみたいと思います。
以前は職業訓練校、いまは国家試験準備学校としての性質を強める歯科大学教育では伝えきれていないことですが、歯科医師は科学に立脚した西洋医学の上に成り立っている職業です。
つまり世界標準レベルの研究倫理(リサーチマインド)を具備していることが求められ、それ故に極めて強力な参入規制を伴う国家資格業となっています。
私の所属する大学では数年前より研究倫理に関するオンライン講習を毎年受講することが求められており、大いに勉強させていただいております。
その中で印象的だったのは、「研究者は積極的に他人の研究の批判と追試を行い、批判を受けた者は真摯に受け止める」という内容です。
確かに未だに全ての分野でエビデンスが充実しているわけではありません。いまは泡沫とされる方法も、研究成果によって主役となる可能性はあります。
だから個々人の思想と信条は自由ですが、歯科医師が科学者であるならば相互批判を行い切磋琢磨をするのも職務のうちではないでしょうか。
世界の歯医研究者はそのような過程を通じて自分のアイデアの問題点を明確化し、自説強化のために必要な研究を繰り返してきました。その現時点での到達点がガイドラインやシステマティックレビューに記されているのだと考えています。
2,SNSは人込みの中で拡声器をつかっているようなもの
SNSでこっそり発信する分にはよいのではないかという言説もありますが、それなら鍵アカでどうぞ。
SNSは多くの人の目に触れ、拡散される公共の場です。その中でも最も拡散力の高いツイッターを使って「こっそり」はありません。
匿名・職業不明アカウントで好きにつぶやくならまだしも、歯科医師を名乗って拡声器で違和感のあることを言っていたら、多くの同業者から質問や注意を頂くのは当然のことです。「注意をしてくるな」は前項も踏まえて筋が通らないのではないでしょうか。
一方で様々な批判的私的にもめげずに症例を公表し続ける歯科医も知っています。
わたしはその方の活動は「情報の可視化」「批判も可視化」という観点で大変有意義だとおもっているので、批判にめげず自分の良いと思うスタイルを貫いていくのはそれはそれで「筋が通っている」と感じます。
あとはそのやり取りをみた第三者がどう思うか、が論点になってくるのではないでしょうか。