今回は世界的に信頼されている英国の公衆衛生研究機関 コクランから発行された、複数の研究を統合し検証した論文(システマティックレビュー)から、最適な検診の間隔に関して論じられたものを紹介します。
多くの先進国において歯科検診、専門家たちがいうところのリコール間隔は、6か月毎が適切と長く言われてきました。
日本の義務教育における学校歯科検診も、年に2回というのが一般的でしょう。本当は年に1回が義務で、2回目は追加的なものとなっています。雑学です。
さてこの文献も統計調査に立脚した論文ながら、保険医療コストの観点が強くあります。英国は1990年代に社会保障費の高騰による不景気「英国病」を克服するために、医療の経済的合理性を高めてきた背景があります。
この文脈から、6か月ごとの歯科検診は妥当であるのかという問題意識に繋がっていると思います。
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私自身の感覚としては、虫歯で苦労した方や歯科領域に大きな関心を持っている方々には6か月ごとというのは最低ラインで、むしろ3か月毎、いや毎月やりたいという意見があるのはわかっていますが、歯に関して「ひと並み」の関心を持ってる人にとっては半年に一回は「ちょっと頻繁すぎる」と思われているように感じています。
もちろん頻繁に確認して早期発見に努めるのは理屈ではいいのですが、こちらから提案する以上費用対効果、時間対効果などといった経済的合理性にある形にしていかないと、幅広い予防プログラムへの参加は難しいのではと考えています。
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結論を急ぐと、このコクランレポートにおいて6か月ごとの検診と、4年ごとの検診で結果に差は見られなかった、とされています。
結論部分には「検診間隔を6か月以上に延長することを安心して選択してよい」とされています。
一方費用対効果については細かい条件設定で、あやふやな印象を受けました。
前述のように6か月と4年で結果が変わらないなら、費用対効果は当然4年ごとのほうが良いということになります。これは日本と英国の保険制度の違いもあり解釈が難しいのですが、今後精読していきたいと思います。大変興味深い部分だと思います。
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以上を受けて、私の解釈としては「こちらからの提案として6か月毎はちょっとハードルが高すぎる。年に1度、最低でも数年に1度という提案は受け入れやすいのではないか」と受け止めています。
もちろん「より頻繁にチェックやクリーニングを受けたい人は、その人が望む範囲で実施したい」という前提です。
また、「歯周病治療後のメインテナンスは予防ではなく継続的な治療という位置づけなのでまったく考え方を別とすべきである。具体的にはプラークコントロールと歯肉の反応に応じて1~3か月毎の来院の継続が必要」と考えていますので、混同なきようお願いします。
最もリスクが高いのは長期にわたって検診を全く受けていないことだと思います。より受け入れやすい提案によって、多くの人を歯科予防をいきわたらせていきたいと考えております。