2月29日の安倍首相の発言から、PCR検査の強化の方針が示されました。
本件は「医師が必要としたものに関して」という発言だったので、希望者全員が検査を受けられるというものではないと捉えています。
このPCR検査に関して情報が錯綜しているので、マトメをしたうえで所感を示したいと思います。
新型コロナウィルスに関する今までの記事は下記リンクからご覧ください。
新型コロナウィルスについてマトメはこちら
https://nakadashika.blogspot.com/2020/02/blog-post_88.html
小学校休校要請について - 新型コロナ所感
https://nakadashika.blogspot.com/2020/02/blog-post_29.html
医療インフラへの負担を軽減する遠隔医療に関してはこちら
https://nakadashika.blogspot.com/2020/02/blog-post_27.html
[アゴラ版]いますぐ実現可能な遠隔医療。患者相談サイトの経験から
http://agora-web.jp/archives/2044503.html
1、PCR検査は治療法の決定に関与しているか
臨床医学的には検査というのは結果によって治療方針を決定するものであるというのが前提です。
つまり検査結果がAであれば1番の治療法で、Bであれば2番の治療法というように、検査結果と治療法が密接にリンクしているのが重要で、保険収載に関する重要な論点であると考えています。
いいかえると、検査結果がAとでてもBとでても治療法が変わらないならば、少なくとも保険収載し幅広く実施する必要がある検査とは言えないのではないでしょうか。
2、軽症患者が隔離入院措置となることで病床数が不足する
まず肺炎を発症していない軽症者に関して、コロナであろうただの風邪であろうと自宅待機という方針は変わりません。
うち80%は軽症のまま改善し、肺炎にはなりません。
— 村中璃子 RIKO MURANAKA (@rikomrnk) February 17, 2020
このとき軽症者にPCR検査を行って陽性判定がでると、その人は入院する必要がでます。
参考:指定感染症及び検疫感染症について
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000589260.pdf
現時点で死亡者を増やさないための最大の懸念事項は病床数です。
参考:新型コロナウィルスとの長期戦にあたって心得るべき5つのこと
http://agora-web.jp/archives/2044507.html
軽症者は仮に新型コロナウィルス感染者だとしても、80%は自宅療養でも自然治癒します。
しかし肺炎患者は新型コロナウィルス感染者でなくとも、入院にて治療しないと死亡する可能性があります。
武漢で起こった混乱は、軽症重症問わず病院受診したことにより、肺炎患者が適切な医療を受けられなくなったためという見方もあります。
つまり、軽症者をPCR検査することによって新型コロナウィルス診断することによって二類感染症の規定により入院させる必要が生じ、空き病床がなくなり、肺炎患者が死亡するという逆転現象が起こる可能性があると考えています。
3、感染拡大防止の観点から
労働者あるいは雇用者目線からは、病院の診断をうけることで欠勤の正当性が認められるため、体調不良があった場合はまず診断書を書いてほしいというニーズがあることは理解します。
そのような労使関係の考え方に基づき、PCR検査を幅広く実施することで、感染拡大防止につながるという見方があるものと推測します。
しかし現時点では市中に一定数の不顕性感染者あるいは極めて軽症な感染者が日常生活を送っていると考えるのが正しい認識だと考えています。
このことは2020年3月1日の厚労省の発表にて「国内の複数地域で、感染経路が明らかでない患者が散発的に発生」していることからも明らかです。
参考:新型コロナウイルス感染症について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html#hasseijoukyou
以上から、PCR検査によって感染拡大を防止できる段階は既に通り過ぎてしまったと考えるのが良いでしょう。
国民一人一人が、もしかしたら既に不顕性感染しているかもしれない、現在感じている体調不良、あるいは花粉症と思われるものは、もしかしたら新型コロナウィルスかもしれないと認識し行動する必要があるのではないでしょうか。
つまり理想的には全国民が人間と接触しないよう努める、ということになりますが、個人あるいは国家の経済的な課題を鑑みても、現実的にはこれは不可能です。
そうであれば前述の通り医療機関がオーバーフローしないように、PCR検査の結果を問わず、わずかでも体調不良を感じるものは欠勤の上自宅療養すべきだと強調します。
これは被雇用者だけでなく、雇用者側の意識としても重要だと考えています。
4、肺炎患者のPCR検査について
現在聞き及ぶところによると、肺炎の診断を受けたが別の病原体によるものと特定されPCR検査を受けられなかったため、不安なので別の医療機関を受診する、ということが発生しているということです。
これは極めて危険な行為をしています。
肺炎患者は入院治療が必要で、新型コロナでなくても、直ちに入院し安静にしなければ命に関わる可能性があります。
確かに肺炎患者に対し、新型コロナであると診断がつくことで、現在実験的に投薬されている抗RNAウィルス薬を使用できることになります。
しかし抗RNAウィルス薬の効果は治療の中心的役割を果たしているとは言えず、万が一新型コロナ感染者であっても、従来の肺炎治療で治癒することが分かっています。
参考:医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第1版(日本環境感染学会)
http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/COVID-19_taioguide1.pdf
原因を知りたいという気持ちは理解しますが、肺炎患者は原因特定よりも治療を開始することが必要な場合もあるいう見方も必要ではないかと思います。
まとめ
以上からPCR検査体制強化に関しては、安倍首相が発現したとおり医師が必要と判断した場合で十分だし、その部分に限って保険適応などの対象となる可能性があり、同時に検査を受けなかったことによる患者の不利益も大きいものではないと理解しております。
一方でどうしても検査を受けたいという想いに関しては理解できるので、そういったニーズに応えるためには民間検査機関に於いて保険外自費サービスとしての検査を拡張してはどうかと考えています。
医師不在の自己検体採取キットを使用するとして、おそらく1件につき1~3万円ほどで実施可能とみております。
これは既に始まっている新型コロナによる経済の失速に対して、わずかながらでも景気刺激策になるのではと考えています。
医療上の検査の必要性については既に論じた通りなので、もしこれを実施する場合には陽性反応がでても軽症の場合は自宅療養という方針を徹底し、感染症法に関しても何らかの修正を加える必要があると考えています。
原因のわからないまま自宅療養という点について不安があるのは理解できますが、上記ガイドラインを参考に医療リソースの適正利用にご協力をお願いしたいと思います。
また自宅療養の際は急激な状態の変化に十分注意し、必要と思われたら直ちに医療にアクセスするというメリハリが重要だと考えております。
1つ誤解を生みやすい点について、「強いだるさや息苦しさ」は「4日以上続いている」に優先しますので、それらの症状を自覚した場合はそれ以上の待機をせず、直ちに医療にアクセスすることが重要ではないでしょうか。
今後も動向を注視していきたいと思います。