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2022年3月4日金曜日

ランダム化比較試験の限界と今後50年の論文

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

たいそうなタイトルをつけましたがほとんど雑談みたいな話で。

医師師 Archibald Cochrane(1909-1988)が著書 Effectiveness and Efficiency: Random Reflections on Health Services(Nuffield Trust, 1972)にてランダム化比較試験(RCT)の重要性を説いたのが1970年代

それから約半世紀が経過する中でRCTにより生み出されるエビデンスに基づいた医療の考え方は浸透し、システマティックレビューにて総括する、あるいは費用対便益解析によって医療政策に反映するという方向性に発展してきました。


一方で実施可能なRCTはやりつくされた感があり、発展途上国特有の医療倫理による制約の低さ故に実施できる被検者数だけ大きい、母集団や前提とする健康状態などが不揃いな質の悪い研究が増加しつつあります。

これもまたその地域の特性に応じた結果として価値のあることですが、母集団の不揃いは純粋な医療行為の効果を測定するという意味では懸念事項となります。


こういったことに対応するために医学研究の最前線では二つの解決策が提案されているように感じます。

1つはデータベース化や多施設研究による、枠組み作りによる解決です。ただしこれは必然的に膨大なリソースを取り扱うことになり、簡単に実施できるものではありません。


もう一つはRCTの原則を放棄した追跡調査です。本来のRCTでは単一の母集団を実験群と対照群の2群に分けることをしますが、この群分けが倫理的な制約で実施しづらいのが今後の医学研究の最大の問題点になっています。

そこでもともと属性の違う2群を用意してそれぞれ観察研究をする、という「RCTではない」研究をすることがあるのですが、この時2群間で様々な条件を統一する必要があります。

その条件が統一されているかの統計的解析法等が色々と考えられていますが、その妥当性がどれだけあるのか画一的なコンセンサスは存在しません


この点を勉強会でも質問したところ、「分野によってそれが一般的な方法であるかが論点」だろうというのが一番納得した意見でした。


恐らく今後RCT一本鎗での研究デザインは限界を迎え、様々な代替的な解析法で論じられる時代になってくると思います。

それが分野における一般的方法かは当該専門家にしかなかなかわからないわけで、ここに普遍化と専門性のバランスが求められていくのだろうなぁ、と感じた次第です。