今回は以下のようなご質問をいただいたので、回答したいと思います。
@DashNaka 先生!歯ブラシと電動歯ブラシで、磨き残しについての有意な差はあるのでしょうか!?
— たびまくら (@kokopelli0908) August 22, 2021
先日、かかりつけの歯科医に「ブラシ→フロス→歯間ブラシ」の順で行うように言われまして、ブラッシングがもう少し効率化出来ればいいなぁと考えているところです。お手隙の際にでもご回答お願い致しま
1,歯ブラシと電動ブラシ
まずご存知の通り電動ブラシのほうがプラーク除去効率が高いのは事実です。同じ人が同じように歯みがきをした場合、より早くより多くのプラークを落とすことができます。
しかし電動ブラシを使用すれば虫歯・歯周病予防になると考えるのは注意が必要です。
研究上でのプラーク除去効率の上昇はわずかであり、それ以上に「適切な部位に当てられているか」「フッ化物の使用をしているか」「糖分摂取を頻回に行っていないか」といった部分のほうが、大きく結果を左右します。
それぞれの論点については下記リンクをご参照ください。
例えば「歯みがき粉をフッ化物なしのものからフッ化物入りの者に変更すること」より、「手ミガキを電動歯ブラシに変更する」ことの効果は小さいことがわかっています。
コスパの観点でいえばフッ化物入りの歯みがき粉を買う方が、電動歯ブラシを購入するよりも価格が安く、効果は大きいので、優先すべき予防法と言えます。
その上で電動歯ブラシを使うのならば、どの程度歯みがきができているかは主観的にはなかなか分かりづらいので、厳密には染め出し液をつかったプラークコントロールレコードという方法で数値化して、その増減を追う必要があります。
統計上は電動歯ブラシに変更することによる虫歯予防効果は、「ない」もしくは「かなり小さい」とされていますが、「歯みがきが楽だ」と感じるならばそれは価値のあることだと思います。
2,ブラシ→フロス→歯間ブラシ?
フロスや歯間ブラシなどの、歯ブラシ以外の口腔衛生用品を「補助的清掃器具」といいますが、近年虫歯予防におけるフッ化物の重要性が見直されたことから、20年程前と比較して大きく考え方が変わり、順番が逆転した部分です。
すなわち、先出記事のとおりお口の中により多くのフッ化物を残留させたいため、フッ化物と歯ブラシの使用を最後に持ってきます。
「補助的清掃器具」つまり歯間ブラシやフロスは、夜就寝前に一度、歯ブラシを使用する前に行うというのが正しい方法です。
現状日本の教育現場ではこの順番に関して教職員でもキャッチアップしきれておらず、あいまいな状態になっています。卒業して古い考え方のままの現場に就職すれば、すぐに正しい方法は忘れてしまうでしょう。
この順番の逆転は今後、まず業界内から情報を浸透させていく必要がありそうです。
最後にフッ化物含有の洗口剤を使っても同じでは、という考え方もありますが、大手メーカーの企業努力は、「歯ミガキ粉の基剤をいかに歯に付着させて、より多くのフッ化物を口腔内に残留させるか」という方向で研究開発されています。
流動性の高い歯みがきゲルや、フッ化物配合洗口剤はこれらの残留効果のサポートがないですが、これと虫歯発生率を結び付けた研究はまだされていないので、とりあえずフッ化物を使用していれば幾らかは効果があると、シンプルに考えてしまってもいいかもしれません。