問題視されている「野党合同ヒアリング」にて、Gotoトラベルと感染拡大に関する学術論文の解釈を巡る議論が巻き起こっています。これはマスコミの先行報道において東大からの研究というブランドパワーによって、Gotoとの関係ありきの論調が強まったのが発端だと感じます。
論文の肝心な部分を十分に把握していなかった厚労省官僚にも思うところはありますが、それ以上に論文を読んだにも関わらず著者の意図を理解しなかった立民党 原口一博議員には残念です。
今回著者も指摘し、注目の集まるLimitationに関して、専門知識抜きで理解できるよう解説したいと思います。
私達は、原著論文(DiscussionのLimitation部分)にも、日本語版のプレスリリースにも「今回認められた関係が因果関係であるかどうかは分からない」と明記しています。また”相関”関係と”因果”関係とは違うものです。プレスリリースで「可能性がある」という表現を使っているのは、断定できないからです https://t.co/Aq3HheH59d
— 津川 友介 (@yusuke_tsugawa) December 8, 2020
科学分野における学術論文は一定の書式で成り立っています。読み慣れると欲しい情報がどこに書いてあるかわかるので、効率的に情報収集ができます。
この中でLimitationは、Discussion(考察)部分にあります。考察の書き方を大枠でまとめると以下のようになります。
1、研究の新規性と必要性
2、実験内容の解釈
3、既存研究に対する論文の位置づけ
4、この論文の問題点と限界(Limitation)
5、結論
この中で結論は論文のクライマックスとして、それらしい書き出しが必ずあります。
一方でLimitationに関して目立つ書き出しはありませんが、結論部分の直前に位置している場合が一般的です。
科学情報を集めるためには多くの論文を並列して比較する必要があり、個々の論文の精査はその次の段階です。時間に限りのある中で読む場合、考察の大部分を占める1と2よりも、コンパクトに論文の価値と限界(Limitation)がまとまっている3と4を読むのも有効な手段です。
普段私たち専門家がニュースで違和感のある情報が流れてきた場合、やはりLimitation部分を確認します。「マスコミは結論部分だけでなく、Limitation部分も言及してほしい」という意見はこれまで何度もあがってきました。
コロナ対策に追われて時間のない厚労省官僚も、とりあえず論文のLimitationは確認しておくと建設的な議論が進むかもしれません。