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2020年12月30日水曜日

維新のベーシックインカム案を読み解く。その1:論点整理

日本維新の会は参議院選後より税と社会保障と雇用の三位一体改革と題して、ベーシックインカムを用いたパッケージ政策の策定を進めてきました。そのアウトラインがついに、取りまとめ役である藤田文武衆議院議員により公表されました。


「説明が難しい」として動画は前後編の60分もあり、さらにマトメ版や、主婦向け版などの続編が企画されているようです。確かに個別政策の意図については詳細な説明が必要なので、ぜひ動画を参照していただきたいと思います。

ここではどのような方向性が示されたか抽出、整理することで、時間の無い方にも関心を持ち、社会保障に関する議論への参加を促したいと思います。


まず改革の意図として、貯蓄や内部留保による停滞から、将来への投資とチャレンジによる流動性に変えることで、経済成長政策・少子化対策・行政効率化を同時に達成する。そのためにフローからストックへの課税へ移行していくということでした。

これは今の利益を重視する自民党に対し、将来の利益を重視して制度により社会の変化を目指す、維新の独自色を出したいというものでした。

以下概算金額とともに項目別に整理していきます。解説は主に筆者。


1,ベーシックインカムとして全国民一律で6~7万円を毎月給付する。基礎年金・生活扶助・児童手当はBIに移行する。

(解説)
基礎年金:現行6.5万円。維新案では報酬比例部分は維持。現状年間10兆円程度の不足分を国庫から補填している。
報酬比例部分:いわゆる年金二階建て部分。年金を多く払ったほうが戻りも大きい、という部分。以前よりこの部分の切り離し、民営化に関する議論は行われている。
生活扶助:現行7万円。維新案では住宅扶助は別に支給する。
児童手当:現行1.5万円。維新案では少子化対策として、子供が多い方が得であると明確に打ち出すものとしている。


2,高齢者にはさらに一律2万円程度の上乗せをする。これはクローバック制度として、支給額のうち死後残った分のは国庫に返納する。

(解説)
クローバック制度:支給は一律であるが、年金の報酬比例部分が多い場合や、資産があればその分を死後に回収されることになる。早期贈与のインセンティブになるか。低所得かつ労働できない高齢者は支給分を使い切ることになるので返済不要で、単純に扶助となる。


3,医療・介護・障碍・教育などの現物支給サービスは本改革案には含めない

(解説)
使い込みや浪費対策として直接給付が向いているものもある。年金に並ぶ最大の国庫支出先である医療や、制度疲弊の目立つ教育に関する改革は必要だが、別に議論するということだろう。


4,フロー課税である消費税・所得税・法人税は減税。所得税は税額控除を廃止し、10%程度のフラットタックスとし、分離課税を廃止して総合課税とする。法人税は租税特別措置を廃止する。

(解説)
税額控除:現状は社会保険料は課税対象額から減じられている。税額控除を廃すると税は増えるが、その分はBIを課税対象とすることで相殺されるというコンセプト。制度の簡素化にはなるだろう。ただし、控除には生命保険・火災保険加入促進の側面もある。この部分は動画内では論じられなかった。扶養家族に対する基礎控除に関する言及もなし。
フラットタックス:現状は累進課税といって所得が上がるほど課税割合が増える。フラットタックスはこれを一律の割合にすることで簡素化する。動画内では示されなかったが、詳細な試算を示した上で賛否を論じたい。
分離課税・総合課税:所得の種類によって課税割合が変わるのが分離課税。一般的に累進課税より優遇されるため、富裕層は分離課税の意図に従って投資などが促進される。総合課税は所得の総額に対する課税で、簡素化につながる。
租税特別措置:多岐にわたる項目を含む膨大で複雑な制度。主に経済活動促進の上での税制上の優遇を目的に設定されているが、既に形骸化・既得権益化しているものもある。廃止によって増税にはなるが、税の簡素化と公平性は促進される。


5,ストック課税強化として、固定資産税を現行1.4% → 2%へ増税資産課税として1%程度を新設相続税や贈与税は縮小、あるいは廃止

(解説)
資産課税:維新案では所有コストを増加させることでフロー化を狙うということ。単に財源としてだけでなく、より利回りの高い資産運用にたいするインセンティブをつける。このことで資産価値自体もあがれば、資産家によっても得があると動画内では解説をしていた。1%の資産課税で36兆円の税収となる見通し。
相続税:現状2兆円の税収。捕捉が難しく、節税によって相続金の2~4%分の納税しかされていない。


全体として、年金再編・少子化対策・世代間格差是正の側面が強い案かと感じました。

維新の資産によるとBIを達成するには100兆円程度が必要であり、藤田氏は「財源を示さないまま声高にBIを訴えるのは無責任だ」と話しています。所得税のフラット課税・総合課税による増収、生活扶助・児童手当の予算2兆円、年金国庫負担分10兆円、資産課税36兆円などを財源にあてる考えのようです。

さらに、これはこれまでの給付付き税額控除に基づく議論をプランA、BIに基づく本案はプランBであり、今後も議論の中でブラッシュアップしていきたいと言っておりました。

藤田氏はツイッターで直接意見していいと懐の広さを示したので、何か改良案や、問題点があるようなら、ぜひ藤田文武氏にツイッターで直接意見を送っていただければと思います。


次回は既出の試算との比較や、各種金額の裏どりをしていき、批判的吟味をしていきたいと思います。