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2020年12月26日土曜日

医療崩壊は医師の怠慢か(1) 現場と経営者の乖離

医師会会長が「医療緊急事態宣言」をしたことに関して、医療に対する大きな批判が巻き起こっています。

これまでは医療問題に関しては厚労省が矢面に立ち、医師会にスポットライトが当たることはありませんでした。コロナ問題は半世紀以上誰も疑うことのなかった、国民皆保険制度に基づく手厚い医療制度に関する問題を浮き上がらせたのではないでしょうか。




これは既に様々なメディアから指摘されている通り、医療体制の柔軟性不足によるものですが、医師がサボタージュしているというという世論が形成されてしまうと、せっかくの医療改革の機運があらぬ方向に向かってしまうのではないかと危惧しています。

医師といっても勤務医・開業医・病院経営で見えている世界が違います。それぞれの事情と、どのようなボトルネックがあるかを解説していきたいと思います。


現場医師からたびたび聞こえてくるのは、「医師会の発信は医師の総意ではない」という距離感です。実際に医師会の加入率は6割程度で、医療最前線を担当している若手医師の加入率はさらに低くなっています。

医療の高度複雑化・大規模化に伴い2000年代には勤務医の医師会加入率も多くなってきていますが、医師会の発信は未だに開業医・病院経営寄りのものになっているようです。




だからといって医師会と勤務医は無関係だと言えるでしょうか。医師会は厚労省と独占的に交渉することができ、医療制度や診療報酬について強い交渉権を持っています。

殆どの医療政策を医師会はリードしており、その枠組みの中で勤務医をはじめとする全ての医師は活動しています。

確かに勤務医の肌感覚的には医師会とは無関係であり、むしろ自分たちをないがしろにしているとも感じる存在だと感じていても、事実として医師の活動は医師会と厚労省の関係の中で決まっていっています。

もし勤務医たちが医師会に対し不満や異論を持つのであれば、オンライン署名活動などで意思を表明する場もあるでしょう。確かに教授の怒りを買うと病院内での出世の目は立たれてしまいますが、もともと出世コースにいない勤務医も多く、病院をクビになったとしても医師免許があれば生活に困ることはありません。

勤務医が「医師会と自分たちは別物」と発信し、ただ現場は頑張っているという事実だけを主張することには、違和感を覚えます。

(続く)