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2019年11月20日水曜日

衝撃の3Dプリンター歯ブラシは有効なのか

こんにちは! 東川口の歯医者・歯周病認定医、中田智之です。



本日はFB仲間から情報提供のあった衝撃(!)の歯ブラシについて考察してみたいとおもいます。

では下記リンクをご覧ください。ジャジャーーーンッ!!!

6秒でできる3Dプリンター歯ブラシ
https://wired.jp/2013/10/03/blizzident/?fbclid=IwAR2549U03QUBgmt5P4eLh3pSHLl17XD80gvPCA0YpHUmoQko12FzyIPrRNc



これはBlizzidentという商品のようですが、すごいインパクトですね!!

実は歯ブラシは様々な形状のものが開発されておりますが、その中でもバツグンの独自性だと思います!



参考までに、これまでおもしろいなーと感じた歯ブラシをご紹介します。

コロコロ歯ブラシ
http://www.shin-shouhin.com/2015/12/03/korokoro/

デッキ型歯ブラシ
https://www.atpress.ne.jp/news/62269



さて話を本筋に戻すと、これらの歯ブラシは有効かどうかというのが質問で、読者のみなさんもソコが気になっていると思います。

 今回はこれらの歯ブラシの有効性について、学術的に分析したいと思います。





1、どういう歯ブラシを使えばいいかは解明されていない


以前より電動歯ブラシVS手用歯ブラシなど、どういった歯ブラシを使うのが最適か、多くの研究がされてきました。

Comparative single-use plaque removal by toothbrushes of different designs.
Claydon N, Addy M.
J Clin Periodontol. 1996 Dec;23(12):1112-6.




しかし有意差のある研究結果はもたらされておらず、学術的コンセンサスとしては「何を使うのが有効かは明らかでないし、既に多くの研究がされてきたので今後も明らかにならないだろう」というところに着地しています。



それは何故でしょうか。



大きな理由としては、人間の口の大きさ・歯並び・顔の筋肉と脂肪のつき方・手の動きのクセに多様性があることが挙げられます。

模型実験で有効性が見られても、実際に多くの被検者に使用してもらって統計をとる段階になると、この被検者ごとの多様性に統計結果が飲み込まれてしまうものと理解しています。



ゆえにその人ごとにやりやすい道具は違っていると認識して臨床に向かうのがよいと思います。



つまりその道具の特性をとらえて個別に指導することが重要で、手が不自由な人には電動ブラシが適しているでしょうし、口の奥まで届かないというケースにはコンパクトヘッドよりも植毛部プラスチックの厚みが薄く丸い形状のものを、歯肉が脆弱でこすれて痛みを伴う場合は毛束が角張っていないものを選ぶのが良いなど、色々なテクニックがあります。





2、何を使うかより、結果的にみがけたかで評価する


それでは何が正解か全くわからないのでしょうか。

そうではなく視点を変えてみて、その道具をつかって結果的にどれだけブラッシングできたか記録し比較することで評価することができます。



具体的に言えば本ブログでもたびたび登場するPCR(O'Learyのプラークコントロールレコード)を測定すればよいでしょう。



3Dプリンター歯ブラシでも、コロコロ歯ブラシでも、いままで使用してきた歯ブラシと比較してPCRが同等か減少していれば、それはその人にとって有効な手段であるということが実証できます。



またPCRが同等であれば所要時間が短いほうが合理的です。

所要時間の短さはフッ素入り歯みがき粉の効果的運用にもつながるので、重要なパラメーターです。





3、もしかしたら研究テーマの宝庫かも


このような新しい歯みがきツールは次々開発されますが、今回の3Dプリンター歯ブラシは、新技術を使用した斬新なものであることは間違いありません。



もちろんお勧めしているわけではなく、PCRを測定しないとなんとも言えないというのが現実ではあります。

しかしデータもないのに有効性を疑うのは、歯科医師であるまえに科学者として正しい姿勢とは思いません。



ここはぜひ、どなたか研究テーマにしてみてはいかがでしょうか。

現状PubMedで検索してもBlizzidentの学術論文は見つかりませんでした。

じつは商品名ではなく、何らかの別の学術的呼称が設定されているのかもしれませんが、そこまで付き合う気ないからパス。



もちろん研究の質としてどの程度のインパクトファクターの雑誌に載るかは、あんまり期待できるものではありませんが、3Dプリンターというもの珍しさで意外といいとこ乗るかもしれませんし、最低でも学会発表でわりと注目を浴びることができると思います。



例えば実験計画を組むとすると、入学したての歯学生(まだブラッシングが上手ではない)を対象とし、男女比を揃えて2群に分けます。

2群ともベースライン時のPCRおよび基礎データを記録します。あくまで一般人が自主的に器具を変更した状況を想定し、あえてTBI(ブラッシング指導)は行いません。

実験群は当日からBlizzidentを使用し、対照群は今まで通りのブラッシングを続けます。

一週間後に再度TBIを測定します。その後全ての被検者にPMTCと口腔衛生指導を行います。

これで単純な解析としてはスタート時点からの変化量で比較できます。

次にもともとブラッシングが良好な群と不良な群を設定し、それぞれどういう結果になったかX二乗検定します。

これで結果がどうあろうと学内発表か学会発表は確実にイケます。万が一有意差がでたら論文化できるかもしれません。



以上、もしやってみようと思ったら、私はセカンドオーサーで大丈夫です。