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2019年6月15日土曜日

ジルコニアクラウンは硬くて丈夫なコスパ最高のセラミック歯!

虫歯や、事故で折れてしまった歯をクラウン修復(被せ物、差し歯)するとき、
なるべく元の歯と同じように、白くてきれいなものにしたいですよね。



調べてみると歯の材料はいろいろあるけれど、
どういう使い分けになっているのかよくわからない。
中には高いものもあるけれど、丈夫で長持ちするいい歯はどれ!?



このページでは、近年歯科業界でも広まりつつある
ジルコニアクラウンの話題を中心に、
被せ物の特徴やコスパについてお話いたします。





1、歯の被せ物にはどんな種類がある?


最もベーシックな修復材料は金属です。
日本の保険診療で使用される12%金銀パラジウム合金は、アクセサリーで使用されるホワイトゴールドとほぼ同じ材料です。

実は咬み合わせの機能では金属材料に勝てるものはありません。

なぜなら、金属は適度な硬さがあるだけでなく、力がかかると「割れず」に「伸びる」性質があります。(展延性)
咬む力は体重とほぼ同じなので、毎日その力がガツガツとぶつかっても、金属ならば簡単には割れずに受け止めてくれます。

クラウンの耐用年数と材料の比較についてはこちら。

しかし、「金属色をしている」という大きな欠点があります。
また、アクセサリーを身に着けると金属アレルギーがでてしまう人も使用がはばかられるでしょう。

つまり、見た目さえ気にしなければ、性能としては保険の金属修復で全く問題ナシ、ということになります。
例えば上顎大臼歯など、日常生活で見えない部分ということで割り切ってしまえば、最もコスパが高いことになります。

装置料金のみで言えば、保険診療で一本3000円ほどで入れることができるでしょう。



しかし当然のこととして、外見にかかわる部分で銀歯が入っていると不自然になってしまいます。(審美性に関わる、といいます)

そういうわけで、金属に代わることができる材料が模索されることとなります。

現在もっとも普及している歯冠色修復(自然な歯のような色をしたクラウン)は、金属冠の外側をくりぬいて、セラミック(保険外)かレジン(前歯に限り保険適応)を張り付ける方法です。
ここでは主に金属冠にセラミックを張り付けたメタルボンドという方法で話を進めます。(レジンはセラミックよりも弱いです)

この方法の利点は、金属の堅牢性を生かしながら、歯冠色とすることができます。
とくに上顎前歯の口蓋側(内側)は、どうやっても目に触れない部分なので金属材料を露出させることができます。そうすると下の歯は金属と接触することとなり、金属材料の高いパフォーマンスを活かすことができます。

ただし下歯は前歯も奥歯も、咬む部分も見えてしまうのでセラミックで覆う必要があります。

セラミックを臼歯などの強い力がかかる部分に使用した場合、かなり改善してきたものの金属冠修復よりも、わずかに生存率は低下します。Kelly PG 2004

これは構造が複雑になっているので当然といえます。
また、セラミックは金属よりも硬いかわりに、欠けやすい(耐衝撃性に劣る)という事実もイメージしやすいと思います。

とはいってもどちらも5年生存率90%以上は達成していますし、10年生存率もメタルボンド(セラミックを前張りした金属冠)で90%をわずかに下回るものの、金属冠と遜色ない耐用年数があることが分かっています。

もしここで「一度入れたら一生ものではないのか」という疑問がでたら、それには明確にNoと言っておきます。あらゆる人工物は壊れるし、構造が単純な金属冠が同じ条件で作成すれば最も長持ちして機能的です。
セラミックは「金属冠と遜色ない耐用年数をもつ」のであって、セラミックのほうが寿命が長いということはあり得ません。(おそらく人体での平均耐用年数と、実験室での理論値、もしくは最も長期的に成功したチャンピオンケースの比較をしています。銀歯だって死ぬまで機能していたケースは山ほどあります。文献引用したいのですが、術後10年以上を追跡調査した研究というのが、どれだけ実現困難か想像すれば、科学的根拠が提示できないことをお分かりいただけると思います。)

話がそれたのでうっすら消しておきました(笑)
なお、レジン前装鋳造冠は保険適応すると5000円ほど、メタルボンドは保険外診療なので70000~90000円が相場です。



それと同時期に、セラミック材料のみでクラウンを作成すると、構造を単純化できていいのではということで、ジャケットクラウンというものが試されました。

セラミック材料は日々進化しているので様々な種類がありますが、いずれも5年生存率90%以上を達成しつつも、前述のメタルボンドには及ばないことがわかります。Sailer I 2015

また、日本補綴歯科学会ガイドライン(P.76)においても、「セラミッククラウンがメタルボンドより有効であることを示す科学的根拠は少ない(一部略)」とあります。

10年生存率については、少し古い材料になりますが前述のKelly PG 2004のデータから70%弱というのは臨床実感と一致します。

ジャケットクラウンは材質によって40000~90000円ほど価格の幅があります。





2、逆転の発想! ジルコニア修復



ここまでエビデンスベースの話をしてきましたが、こっからさきはエビデンスではない話であることをご了承ください。臨床実感なので不確かな話ですが、皆さんの役には立つと思います。

さて、ジャケットクラウンに使われるセラミックの中でも、ジルコニアは少し特殊な使われ方をしていました。

ジルコニアはセラミックの中でも粘りがあるため(応力誘起相変態強化機構というらしい)、耐衝撃性が他のセラミック材料と比べて、抜群に高いことがわかっています。

しかし、色が真っ白で透明感に乏しい(演色性が低い)という欠点があるため、メタルボンドの金属フレームのように、外見にふれない部分で使用し、表面はメタルボンド同様演色性のたかい別のセラミックを焼き付ける、という使い方が主流でした。

この方法ではセラミック同士の結合に難があり、結果はいまいちでした。
Sailer I 2015の報告でのジルコニアはこの方法で、考察部分に外装部分の剥落が多かったと記載があります。



しかし近年、逆転の発想でジルコニアは再注目されます。

というのも、臼歯部であればそんなに外観にふれないので、バッチリ歯の色調を再現しなくても、なんとなく白ければ金属色よりもはるかにマシではないかということで、外装しないジルコニアをそのまま装着する方法が生まれました。
なぜいままでそこに気づかなかったんだ!

つまり、元の歯を100点、金属色は明らかに異質なので0点とすると、従来のメタルボンドや、ジルコニアフレームポーセレンは見た目90点~120点を目指す方法となります。

その中でジルコニア単独のクラウンは、見た目60点~80点のかわりに、制作手順を減らして価格を抑えた上で、臼歯部の耐用年数はメタルボンド超えを目指せる方法となります。

臨床実感で恐縮ですが、個人的には臼歯部であればメタルボンドよりジルコニアを使用したほうが長持ちすると思っています。

料金は40000円~50000円が相場といえるでしょう。
(現在、ポーセレン外装ジルコニアと、単独ジルコニアの表記が分離していないため、混乱させる事態となっています。ポーセレン外装ジルコニアは90000円程度になります)



このように、ジルコニア単独の被せ物は、主に臼歯部においてコストパフォーマンス(費用対効果)の高い選択肢として、次第に普及してきています。

メーカーもこの動きを受けて、ジルコニア自体にグラデーションをつけたりして、単独でも80点~90点の見た目を目指せる商品がでてきています。もちろん、こういったものは前歯での使用も視野にはいってきております。

フレームとしてではなく、単独修復でのジルコニアは臨床現場とメーカーが主導して広まったので、質の高い追跡調査データが少なく、エビデンスを提示できないのが残念です。

ただ、これまでのフレームとしての臨床応用の実績を鑑み、そこから外装剥落のトラブルが減ったと考えれば、妥当性と意義は十分かと思います。

これまで120点を目指すメタルボンドが高額かつ繊細だった分、80点の妥協をするかわりにコストダウンかつ頑丈なジルコニアの登場は、歯科医師にとっても幅広い選択肢をご案内できるようになり、私はいいことだと感じております。




東川口の歯医者・歯学博士・歯周病認定医
中田 智之

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