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2019年6月15日土曜日

保険適応の歯周組織再生材 リグロス

中田歯科医院では2017年6月より歯周組織再生剤リグロス
取り扱いを開始いたしました。



初期の歯周組織再生療法はGTR法と呼ばれ、
非常に細かい作業が必要でした。
現在は保険適応になっていますが、歯科医師・患者双方の負担は大きいです。


正直、手技が面倒で、保険の料金じゃやってらんないという
歯医者が多いと思います。(しかも失敗すると悲惨なので私はやりません)


次にエムドゲインという歯周組織再生用材料が登場すると
手術時に患部に薬剤を塗布するだけという(ようはブッかけるだけ)
簡便な方法(=処置時間が短い =患者負担が少ない)で実現可能になりました。

しかしエムドゲインはブタの歯胚から採取した多用な物質の混合物であるため、
薬事法において医薬品とすることは出来ませんでした。
そのため保険適応が不可能で、高額な自由診療に位置付けられていきました。





そしてリグロスは、大阪大学 村上伸也教授と科研製薬株式会社を中心とし、
日本歯周病学会および複数の歯科大学大学病院の連携の下、


医薬品として保険適応にしていくことをゴールとして


1000人以上を対象とした多施設・前向き臨床研究を経て
ついに2016年12月に販売開始となりました。



リグロスの登場によって、保険適応での歯周組織再生治療に、
より実施しやすい新たな選択肢が生まれました。
ようはブッかけるだけで済むということです






1、適応症と効果量、その限界



リグロスのみならず、歯周組織再生治療の適応は限られています。
具体的には、垂直性骨欠損と、クラス2以下の根分岐部病変
2つのみとなります。(何を言ってるかはわからなくてOK)


これらはレントゲンをとったり検査をしないと分かりませんので、
歯科医師にしか歯周組織再生治療の適応の可否を
判定することはできません。(いずれイラストくらいは載せたいと思います)


つまりごく一般的な進行をしている歯周病には効果がなくて、
色々な条件が整って、これはと思うところに使うと
いくらか効果があらわれる、というのが歯周組織再生療法です。


グラグラの歯にリグロス使えば再生して復活する、
というものではありませんので、過剰な期待をしてはいけません。





それではどのような、どの程度の効果があるのでしょうか。

正しく使用した場合、垂直性骨欠損もしくは根分岐部において
対象群である歯周外科手術のみを行った部位と比較して、
ランダマイズ比較研究で0.5mmの有意差が見られたと言われております。


これは被験者数が大きいため0.5mmで有意差となっておりますが、
実際臨床上で0.5mmの差というのは
歯周組織検査では誤差の範囲内といっても過言ではありません…。



しかし、たった0.5mmでも、それで根分岐部病変がクラス2からクラス1に、
クラス1からナシになるだけでも、
すごく大きな価値があると言えます!(専門用語なので分からなくてOK)


また、ブリッジの支台歯で垂直性骨欠損があった場合、
少しでも骨レベルを稼いでおくことで
ブリッジの寿命が延びるかもしれません!(歯科医師だけ感動してください



…ええ、専門用語づくしだったと思います。
ですが、申し訳ありませんがリグロスの効果というのは、
専門家が見て「おおっ」と思うようなマニアックなものです。


一般人が見て、明らかにグラグラがなくなったとか、
しっかり力をいれて咬めるようになったとかは、
「ごくたまにあるかもね」程度です。(チャンピオンケースといいます)





それでは結局グラグラの歯は良くならないのか、
歯医者さんに行っても無駄足なのかというと、
そうではありません。


歯がグラグラなら間違いなく歯周病で、
その歯はもしかしたら抜歯か様子見以外に選択肢はないかもしれません。


しかし、歯周病を放っておけば、他の歯までグラグラしてきて
ついには食事をするのが困難になってしまいます。


歯一本のグラグラが治るかどうかより、
全部の歯がグラグラになってしまう前に手をうつために、
歯周病治療のできる歯医者さんにいきましょう。



2、リグロスの料金と、保険適応での注意点



リグロスの薬剤料は約2000点、
3割の一部負担金で6000円になりますが、
保険治療での歯周外科手術料などがかかります。


歯周外科手術は歯1本につき630点で、
3割負担だと1890円に相当します。
別途、通常通りの再診料、医学管理料などが加算されます。



また、歯周外科治療を保険適応で行うためには、
3回以上の歯周組織検査を含む、
歯周基本治療を完了しなければなりません。


冗長に感じるかもしれませんが、
歯周基本治療を行うことで手術が必要な部位が減少し、
手術も簡単になり、術後経過もはるかに良好になります!





以上、新たに登場したリグロスのご紹介となります。

いままでは歯科医師が、
歯周組織再生治療が効果的だと思う部位をみつけても、
料金や手技の煩雑さからなかなか実施に至りませんでした。


しかしリグロスが保険適応となった今後、
歯周組織再生治療は
もっと受けやすく、身近にご提案できる時代になると感じております。



東川口の歯医者・歯学博士・歯周病認定医
中田 智之

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