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2022年10月6日木曜日

アメリカの民間医療保険、高齢者医学会の血圧への見解など。産業医講習会2日目

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

先日産業医講習会にいってきましたが、その中で印象に残る内容がいくつかありました。講演内容には触れないようにしながら、関心のある部分を備忘録としてまとめておきたいとおもいます。


1,根拠のある予防医学で支出抑制する米国の民間保険制度

以前より関心のあった米国の民間保険制度についてHMOという単語を知ることができました。

米国の民間医療保険においてネットワークという概念が重要で、HMOはネットワーク外では医療を受けられずかかりつけ医も指定される、対するPPOはネットワーク外の医療機関も割り増し価格で受けられるという差異があるようです。

またHMOでは100人単位の疫学研究者を雇っており、医学統計に基づく保険設計をしているようです。

アメリカでは民間医療保険同士で競争原理が働いているので、より安価により充実したサービスを提供して保険加入者を募る必要があります。

そのためには保険支出を減少させる必要がありますが、そのために効果が明らかな予防医療を給付サービスに含める施策を行っているようです。

当然効果の小さい予防医療を提供しすぎれば保険者は競争力を失い淘汰されていきます。

米国におけるEBMの充実にはこういった自由市場を活用した合理的な保険制度があるからなのでしょうね。

日本のように国家が運営する単一の保険医療制度では競争原理が働かないために、提供サービスの取捨選択が政治・学術におけるパワーバランスに影響され停滞します。結果的に肥大化していくのが構造的帰結点となっており、私としては米国に大いに見習うべきだと考えています。

ゆえにいまの日本の皆保険制度下で「支出を削減するための予防医療」を導入していくのは、極めて慎重であるべきだと思います。



2,高齢者の目標高血圧

何かと議論の的になっている高血圧水準ですが、日本老年医学会にソースがあるということで見てきました。下記に共有します。

P65~74歳には140/90 mmHg以上の血圧レベルを降圧薬開始基準として推奨し,管理目標140/90 mmHg 未満にする.(推奨グレード A) 75歳以上では150/90 mmHg を当初の目標とし,忍容性があれば140/90 mmHg未満を降圧目標とする.(推奨グレード A)日本老年医学会雑誌第54巻第3号 P.271

高血圧コントロールによる寿命延伸効果は、50代以下では明らかです。一方で前期高齢者・後期高齢者における対応は意見が分かれるところがありました。

加齢により血圧は自然に増加しますが、このガイドラインに基づくと多くの方が高血圧治療が不要になると思います。またガイドライン内では血圧の下げ過ぎによる副作用への注意喚起もありました。

とはいうものの医学的状態は血圧のみでは判断できず、他の検査指標もあわせて個別の総合判断が必要です。診察を受けたこともない歯医者のブログにかいてあることより、あなたの状態をよく理解している主治医を信用しましょう。