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2020年4月15日水曜日

システマティックレビューでメタアナリシスしよう!

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

今日は、ついについについに!歯周病学講座勉強会でのシステマティックレビューを作ってみようという課題が(だいたい)終わって、一連の作業方法もわかったので共有しようと思います!

これを読み終わることには、なんとメタアナリシスが分かるようになる!という効能があります!

システマティックレビューにおけるPRISMAに則った論文検索から採用の流れまでに関しては、そんなに分かりにくくない部分なので割愛します。リクエストがあったら書きます!



1、システマティックレビューとPRISMA宣言


いま医療業界で注目されている(いた?)システマティックレビューですが、EBM(エビデンスに基づいた医療)の根拠となる質の高い論文、というところはご存知のことと思います。

しかし実際にエビデンスレベルの高い論文というのは「RCT(無作為割付を伴う介入試験)のシステマティックレビュー」なので、実はレビューした結果Case-controlしかないとか、前向きだけどChortだとかいう場合はエビデンスレベルのランクに入りません。

あくまで総説として参考にする、という扱いになります。

それでも作成する過程においてどのレベルまで研究が進んでいるかわかるので、推奨度をアウトプットできるので、非常によく作成されます。



システマティックレビューの手順がPRISMAとしてコクラン(イギリスの研究機関)より明示されて以降、システマティックレビューの本数は爆発的に増えています。

中には正直言って粗悪なものもあります。

そして実際自分で作ってみて強く感じたのは、ちょっとした匙加減でいくらでも結果をコントロールできるということです。

「そんな不確実なものではエビデンスとしてどうなの!」というツッコミが入りそうですが、ここがPRISMAの良くできているところで…。



PRISMAに基づいて作成されたシステマティックレビューは、その手順全てが検証可能です。

だから結果に違和感を感じたらメソッドの部分をチェックする。それで「ああ、このシステマティックレビューはここがダメなんだな」あるいは「都合が悪いから記載を避けたな」ということがわかるということですね。

(参考)PRISMA日本語版
https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/54/5/54_5_254/_pdf/-char/ja



そうであれば、システマティックレビューが急増する中、もはやその結論部分を額面通り信用するというのは危ない、ということになりうるかもしれません。

PRISMAの適正運用ができているかチェックをしていき、時に孫引きして自分自身で納得する結論につなげなくてはならないのかもしれませんね…

そんなめんどくさいこと毎回しないけど。コクランかNIHが言ってれば鉄板でしょ
(実際、無名の研究機関や、個人名義のシステマティックレビューには注意深く対応すべきかなとは思いました)





2、システマティックレビューとメタアナリシス


さて、PRISMAに基づいて手順通りオンラインサーチを用いて既出論文を集めて推奨度を判定するのがシステマティックレビューである、と分かりました。

ただのレビューとの違いは、既存のレビューがいわゆるポエム好き放題書いていたのに対し、PRISMAという一定の流れに沿って検証可能の論文として書いている「システマティック」だというわけです。

ではよく混同されがちなメタアナリシスとは何でしょう。



システマティックレビューには、最終的に採用した論文に対して、「質的統合」と「量的統合」という結果を出します。

質的統合というのは、集めたはいいものの実験計画がバラバラなので、とりあえず文章的にまとめるしかなかった、あるいは量的統合できなかった部分について評価するといったものです。ようは感想文ですね。

量的統合というのは各論文の共通する指標にを抽出して、統計的に統合することです。統計(アナリシス)を上位(メタ)統合するので、「メタアナリシス」です。



つまり、システマティックレビューは論文の形式を示す用語で、メタアナリシスは統計解析方法を示す用語、ということですね。

「システマティックレビューでメタアナリシスとしてフォレストプロットを作成した」を置き換えると、「Case-control研究でサバイバルレートの比較としてCoxハザード回帰分析を行った」とか「RCTでマンホイットニーU検定をボックスプロットで示した」とか、そういうノリですね





3、フォレストプロットしたい!


そういうわけでメタアナリシスの代表格がフォレストプロットです。これは皆さんにとっても良く目にするリザルトの様式だと思います!

もし文献数が多い場合は出版バイアスを疑ってファンネルプロットすべきですが、今回は割愛します。



このフォレストプロットですがExcelでは作成できません。使用されることが多いのは、統計分析フリーソフトRです。

(参考)統計分析フリーソフト R
https://statistics.co.jp/reference/software_R/free_software-R.htm

しかしながらこのRというソフト、DOS/Vプロンプトばりのコマンド方式UIで、臨床歯科医という現場の人間にはツラい…!!

それをなんとかWindows95的なグラフィカルUIにしてくれるという神対応をしてくれたのが自治医科大学です。その名もEasy R、フリーソフトEZRです。

(参考)無料統計ソフト EZR ー 自治医科大学
http://www.jichi.ac.jp/saitama-sct/SaitamaHP.files/statmed.html



マウスが使えればこっちのもんだぜ! ということでエクセルで作ったデータをクリップボード経由でインポート。「統計解析」 → 「メタアナリシスとメタ回帰」と進んで、適切な解析方法を選ぶ。これで前出のフォレストプロット図が得られます!







4、量的統合するためには解析法を揃えなければならない


ではインポートするエクセルデータをどう作るかですが、PRISMAに沿って採用した論文の中から、量的統合をするために、同じような評価基準、同じような統計解析を抽出する必要があります。

場合によってはデータから自分で統計しなおしたり、分母分子を逆にして再計算しなおしたり、という場合もあります。



たとえばリスク比(RR)とオッズ比(OR)にはRR=OR/[(1−P0)+(P0×OR)という換算式があります。

この換算式は有名なものだから使用して良いのですが、あるシステマティックレビューにはハザード比(HR)とリスク比(RR)は近い性質を持つので、HR = RRとする、なんてこともやってたりしてます。

「近い性質を持つ」というのはあながち間違いではないのですが、計算式が違うのにイコールで結ぶのはいくら何でも乱暴じゃないかな! そのあたりをどうとらえるかで、システマティックレビュー全体の信頼性を判断する、というのが必要になってくるのだと思います。



ということで今回はCase-control studyで、主な結果はカプランマイヤーの生存曲線で示されており、そこからCoxハザード回帰分析にてハザードレート(HR)という形でアウトプットされている文献のみを量的統合の対象としました。

残念ながら1件の論文はChort studyでリスク差をアウトプットとしていたため、これは質的統合のみに回すこととしました。この文献はIPTWという、これはこれで味わい深い解析法を採用しているので、またの機会にまとめたいと思います。



というわけで、とりあえず量的統合に採用する論文のHRと、95%CIの最大値さえわかればフォレストプロットが描けます!

その数値でどうやってeffect sizeとか異質性が算出できるのかはサッパリわかりません!
また次の機会に勉強したいと思います!