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2019年7月18日木曜日

歯肉の炎症を抑える歯みがき粉の功罪

昔からテレビCMなどでよく見かける「歯周病用歯みがき粉」。

最近ではネット広告などでも積極的に売り出しています。

それだけ歯周病の初期症状を自覚している人が多くなってきている、高齢化社会の売れ筋商品なのかなと感じています。

実際、歯周病治療を開始するときに、「今使用している」もしくは「使用したほうが良いのか」と質問を受けることは多いです。



しかし私はこの「歯周病用歯みがき粉」、もう少しメーカーは正確な情報を伝えてほしいなと、腑に落ちない思いを抱いています。






1、歯みがき粉の薬効成分は一時しのぎに過ぎない




歯みがき粉の成分と、それに対応する広告表現については下記のリンクの通り制限されています。

https://www.hamigaki.gr.jp/hamigaki1/kiyaku_01.html



では「医薬品」とか「薬効成分配合」とか書いてあれば確実な効果があるのでしょうか。

効果はあります

しかしその効果は、ほとんどの歯周病用歯みがき粉の場合、抗炎症作用だということが注意すべきポイントです。



抗炎症作用というのは、炎症(腫れ、出血、痛み、赤みなど)を抑える効果です。

歯周病の症状としてこの炎症が抑えられれば、自覚症状としては治ったように感じるでしょう。

しかしそれは一時的に、表面的にでしかありません。






2、歯周病は、どう考えても歯科医師にしか治せない


歯周病の根本の問題は歯肉の奥深くに潜り込んだ歯石です。

これは歯科医院で麻酔をかけてとる以外はありません。



想像してみてください。正常な歯周ポケットは2ミリなので、ちょうど爪と指先と同じ程度の溝です。

この程度ならば、ブラシをかければ奥まできれいになりそうですよね。汚れがこびりついていてもなんとか自分で除去できそうです。



しかし、この溝が6ミリとか8ミリだったら。しかも指はジュクジュクに炎症を起こしていて、汚れ(感染源)は爪の裏側に付着して、石のように硬かったら!

明らかに自分で清潔にするのは不可能でしょう。



歯周病とはこのような状態です。

抗炎症作用によって症状を緩和するのは、感染源である歯肉深く潜り込んだ歯石を放置したまま、痛みと腫れをお薬の作用で抑えているだけということです。



当然、感染源はそのまま存在するので、日に日に病状は進行しますし、いつかお薬では抑えきれなくなります

もちろん抗炎症薬のみで歯周病が治癒することは、理論上ありえません。

抗炎症薬だけでなく、細菌を死滅させる抗生物質を併用したとしても、歯石をそのままにしているのでは歯周病は治らないことは、長年の研究で既に分かっています。





3、歯周病の早期治療の機会を逃してしまう


歯周病は早期に適切な歯科医院で治療できれば、ほとんどのケースで治すことができます。

参考:歯周病学会専門医・認定医



私が危惧しているのは、せっかく出血や歯肉の腫れといった歯周病の初期症状を、体からのメッセージとして認識したのに、歯みがき粉の抗炎症作用でごまかし治療を先延ばしにすることで、治るはずだった歯周病が治らないとこまで進行した、抜かなくて済むはずの歯が抜くしかなくなってしまった、ということが起こりうるのではないか、ということです。



とはいうものの、仕事や家庭の事情から歯科医院にすぐいけない、継続して通えないという方も多いと思います。

そういう場合に、「中継ぎとしての歯周病用歯みがき粉」はアリだと思っています。

抗炎症作用によって歯肉の痛みなどが改善し、日常生活が楽になるならば、短期的には悪くない処置だと思っています。



私がメーカーに提案したいのは、歯みがき粉で治ると誤解させるような表現を避け、あくまで一時的な改善が効果があるもので、機会を見てその後に歯科医院を受診することを奨めるメッセージを打ち出してはどうかということです。



SNSで情報はあっというまに広がる世の中です。メーカーにとっても、患者を適切な医療につなげるメッセージを発信するのは、メーカーと消費者の信頼関係、メーカーと医療従事者の信頼関係のためにも、重要であるのではないかと思います。



東川口の歯医者・歯学博士・歯周病認定医
中田 智之