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2019年7月2日火曜日

科学だけでなく、医療も葬式のたびに進歩する。

という言葉にであったので、なかなか面白いと思ったので考察します。



実はこの現象は医療現場でも大きな問題で、例えば「風邪に抗生物質は無効」というのは誰もが知っているのに未だに抗生物質の処方は止まりません。

これは抗生物質が万能治療薬のように投与されていた時代に生きた一般の人たちにとって、あるとき突然抗生物質が投与されなくなると驚くからです。

そして「あの医者はケチかヤブだ」という評価になってしまうと困るので、医師もなんとなく抗生物質を処方し続けます。

抗生物質の乱用は耐性菌を生み出し、いま抗生物質で解決できる溶連菌などの疾患も解決できなくなり、同時に大きな手術も感染症リスクが増大すると実施不可能になり、人類に大打撃を与えるという事実は知っているのに、未来の話だから「とりあえず今は」みなかったことにされます。



これは抜歯も同じで、今は「特に理由がなければ抗生物質は処方しない」「血液サラサラの薬を飲んでいても中止しない」というのがスタンダードですが、それとは真逆の時代(たった20年くらい前)に現役だった歯科医師はそれまでのやり方を変えないでしょう。

とはいえ、彼らに悪気があるとは思いませんし、その一事で批判するのも避けてほしいと思います。彼らの信じる危機感や正義感に基づいてのことなので、最終的に治癒していれば問題ないと思います。ただ時代が変わってしまったと…。





1、情報は常に進歩するので、考え方は変えなければならない


最近、「ビスフォスファネート製剤も中止しないで抜歯する」というのが3年程前にガイドラインで決まったという情報を聞いたのですが、どう解釈したらいいか悩んでいます。



https://academy.doctorbook.jp/columns/MRONJ2#



今のところ休薬してもらっていますが、私は新しいガイドラインが適切な機関から適切な方法で発表されれば、それに従うつもりです。



新しい情報がもたらされたら、それまで信じてきたものを「変える」のが正しい理性だと思います。



それはなかなかできることがないから、医療も葬式が重なって構成員が新陳代謝しないと進展しないのかもしれません。

しかし、そうならないように、正しい知識をがんばって普及することこそ重要だと思います。

なお、科学は葬式のたびに進歩する、というのはマックスプランクの言葉だそうです。
http://flipoutcircuits.blogspot.com/2018/03/blog-post_12.html





2、歯科で昔の常識が変わってしまったものリスト


・フロス オア ダイ

フロスを使用しないと虫歯や歯周病になって死ぬ、というアメリカ発の有名なキャッチコピーです。

実際には「特に必要なければ」歯ブラシだけで十分死ぬまで予防できます。
また、歯周病患者はフロスを使うよりも歯間ブラシを使うべきです。フロスは非常に適正使用の難しいツールなので、使用を指示するのは必要最小限にとどめるべきです。



・歯磨き粉をつけずに磨く

以前は予防のためにプラークを徹底的に除去する必要があると考えられていました。

しかし現在はプラーク完全除去を目指しても虫歯発生率低下に寄与せず、フッ素の使用のみが虫歯発生率低下に関係することが分かっています。

つまり、歯周病患者以外は、「人並み」のブラッシングと、適正量のフッ素いり歯みがき粉(意外と多め)を使用し、3分以内でブラッシングして口をゆすがないのが最適解です。

フッ素入り歯磨き粉を減量すると、口腔内フッ素濃度に敏感なフッ素による虫歯予防効果が発揮されなくなるので、全ての虫歯予防の努力が無駄になります。

なお歯周病患者は少なくとも治療期間中は「厳密な」プラークコントロールが必要なので、条件分けして考えるのが適切です。



・ENAP
10年以上だれもやってません。教科書から消していいはずです。

アマルガムは口の中に残ってたりするので、知識として知っている必要はあるでしょう。

しかし、軟組織の手術法であるENAPは、実施したかどうかは重要ではないので知っておく必要からしてありません。



・楔状欠損はブラッシング圧だ

側方運動によるアブフラクションというのが主流ですよね。

もちろん過剰ブラッシング圧はチェックすべきだと思いますが、それを防止するために縦磨きに変更させるのは本末転倒だと思います。パームグリップをペングリップにかえるか、毛の硬さを変えればいいだけです。



・大臼歯補綴
特に(上顎)第二大臼歯補綴に関して。カンチレバーブリッジを入れることで第一大臼歯のリスクを高め、その効果として対合歯が伸びるのを防止するとあります。

しかし私は対合歯の使っているかどうかも定かでない第二大臼歯よりも、患側の第一大臼歯のリスクを最小限にするほうが重要だと思います。それがなくなると義歯になりますので。

短縮歯列弓について、歯の寿命や顎関節症との関係は根拠不明確です。





東川口の歯医者・歯学博士・歯周病認定医
中田 智之