本来は5月に予定されていた歯周病学会ですが、コロナ騒動で延期・Web開催となり、それもだいぶ遅れていましたが先週ようやく公開となりました。
歯周病学会は認定医・専門医制度もしっかり整っていることから、歯科学会の中でも有数の会員数、参加者となるのですが、このような大きな学会でWeb開催という初めての試みを無事整えられたこと、関係者の皆様、特に主管学校の方々のご苦労推して知るべしと思います。
よくととのったウェブサイト、インターフェースで、好印象を持ちました。
さて、この中で私のような伸び盛り(?)の歯科医にとっては認定医・専門医教育講演と、倫理委員会企画講演がメインです。
参加した証明書が認定医・専門医申請に必要なので(^^;
不正防止検証の観点からいろいろやってみましたが、動画スキップはできませんので悪しからず。
というか一回中断して再視聴するときも、「途中から再開」というのはできないので、最初から見ないといけないんですね。
ところで倫理委員会企画公演の、福原俊一先生「臨床疫学は、日本の臨床医学にバランスをもたらす」はすっごい良かったです!
私も従来より日本の医学研究は基礎研究に偏重しており、臨床疫学はかなり遅れているように感じていました。
それが下記記事ような批判を受けることや、新型コロナ対策が二転三転する原因だと思っています。
(参考)医学部で数学を勉強しないのが諸悪の根源 ― 八幡哲郎・アゴラ(2020年5月9日)
個人的には先進国ならではの患者権利の強さから、倫理規定のハードルや、通さなければならない書類・審査が多すぎるためかと思っていました。
この部分では福原先生が提唱するProtectid timeはすごく納得したアイデアです。これは疫学研究費を財団から大学に提供する条件として、研究者が一定割合の時間を臨床から切り離し、研究に関与する時間をProtectするという、米国で実践されている仕組みです。
私も大学院生時代に、電話番兼任(後輩が入らなかったから3年間)だったり、患者さんからの呼び出しで、時間のやりくりに悩まされた体験があります。かといって完全に臨床と隔絶された、研究オンリーの部署に所属するのも、医師・歯科医師のキャリアデザインとしてはリスキーな選択です。
一方で新しく学んだこととしては、観察研究のエディンバラ学派と、基礎実験研究のドイツ学派という考え方です。
日本の基礎実験偏重はドイツ学派の伝統ということは、なるほどと理解できます。
基礎研究の重要性は変わりませんが、現状あまりに臨床疫学研究は日本国内で軽視され、海外文献に頼り切りになっているので、リバランスは必要だと思います。
私自身の考えとしては、臨床疫学研究がなければ治療法解明の決定打にはならないと考えています。
この点福原先生はRTC至上主義と批判していましたが、そもそもRCTを大事にする土俵にも上がってないのが日本の現状ではと感じております。加えて、中国・ブラジルなどでの「条件だけ満たした質の悪い」システマティックレビュー・ハックについても、どうお考えか質問したかったです。
(参考拙稿)感染拡大と戦う武器、社会統計学の教育について ― アゴラ(2020年5月13日)
エディンバラ学派はその後イギリスのコクランや、アメリカのNIHならびにCDCなどと発展していったんだなと思うと、日本がこれから疫学研究を育てるのは大変苦労しそうです。
やはり本場の体験に勝るものはないので、留学先などの選択肢として選ばれるようになるインセンティブがあると良さそうだなぁと感じました。
ジョンズホプキンス大学 MPH日本プログラム
これは受けてみたいなぁ…!